log | ナノ
いっつも。いっつも、なんだ。私がダメな時とか、くじけそうな時はしっかり手をつないで、こっちだと道を教えてくれる。逆の立場になって私が手をひこうとすると彼は不機嫌そうな顔をして、でも、ちゃんとついてきてくれる。どちらかがぐんぐん先に進むことなんてなかった。同じくらいの歩調で私と進む。幸せだったし、それが当たり前なんだと思っていた。
思ってたんだけど、やっぱり永遠はないんだなって実感した。こういう時はどう笑えばいいんだっけ、どんな言葉をかけたらいいんだろう。
目の前で仲睦まじく座って、何も喋らなくても通じ合ってますっていうあの二人に。
「おや、どうしたんですか。そこにぼさっとたって」
「ううん、なんでもないっス」
へら、っと笑って「報告書、出来上がったから読んでね」と言い残してその場から去っていく。こんなの言わなくたって彼のデスクに置けば、読むのになんで土壇場になって出る言葉は薄っぺらいんだろう。
「ちょっと待ちなさい」
「なんスか、誤字脱字ならちゃんと確認したんスけど」
昔からできない敬語を彼にぶつけると顔を歪めて「無理しないでください、今は二人なので」なんて言うんだから。
馬鹿でしょあんた、婚約者がいるのに「二人」だってさ。
こういう会話を婚約者の目の前でできるの?ああ、愚問だったね。私の気持ちを知らないで彼は無表情で私の返事を待つ。だが、私は何も返す言葉はない。出てくるセリフは全部暴言ばかりだ。ギリっと歯を食いしばる。
「何が不満なんですか、最近まともな会話をしてませんよ」
「ねえ、する必要ってあんの?」嘲笑い付きで言ってみると彼は眉間にしわを寄せた。
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