log | ナノ
*病み表現を含む

「ごめんください」

「やあ、今日も来てくれたんだね、すごく嬉しいよ」


割烹着を身につけて三角巾をつけた神獣、白澤さんが私の顔を見るなり張り付いた笑みを浮かべてそっとさりげなく片手を握る。
先輩様のような冷え性の薬でなく私が買い求めに来たのは避妊薬と媚薬。

ビッチだとか言われても私は別に気にしない、体で人を落とすのが私の仕事だから。顔色見るなり、白澤さんは私のほほに片手を添えて「可哀想に」と一言つぶやく。そんなこと思ってないくせに、よく言えたもんだ。


「仕事、嫌にならないの?僕だったら君のことを雇ってあげるよ」


甘い囁きを落として、手のひらに薬の袋を載せる。


「ありがとうございました、白澤さんこれからも」

「ああ、薬、使ってね」


にっこりと屈託のない笑顔を浮かべて私から手を引いた。汚い私に触れてはいけないという本能でも働いたんだろうか。
薬をもらって財布からお金を出して私はすぐに立ち去ろうとするけど、一瞬だけめまいがした。それを見逃さなかった白澤さんは私の腕を引っ張って心配そうな顔をするなり抱きしめ始めた。


「ねぇ、その仕事辞めない?僕が一生面倒見てあげるから。苦労なんて絶対させないから。悲しい重なんかさせない、だから僕と一緒にこれから暮らそう?」


私に向けられる瞳はどこか別っぽくて、どこか据わっているような感じがした。白澤さんから香る、薬の匂いと桃の香りがじわじわと侵食していく。ドロドロに溶けていく理解力と理性が音もなく崩れていく。


「白澤、さん」

「あれ、なんだか君。熱っぽいね、僕の部屋で寝てて、うん、そうそう、その薬もちょっと間を空けようよ、使い続けると体に良くないからね。あれ、もっとぼんやりしてきた?これは大変だね、ほら、僕が抱き上げてあげるから。片足上げて、僕の首に腕を回して?いい子だよ、とっても」

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