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「動物が好きなんですよね、鬼灯様」


掃除をしていると、かわいい動物のぬいぐるみがたくさん出てきた。

南国の動物が多かった、例えばコアラとか、黄色のゾウとか。ふんわりしている動物のぬいぐるみを何度も頬でなでていれば眠たくなってきた。ばっと、後ろからぬいぐるみを取られてしまい、夢現すら取られた。

そうしたのは、鬼灯様で顔を歪めている。代わりに、箒を渡されて「さっさと掃除を終わらせてください」と言われた。鬼灯様の機嫌をとるわけじゃないけど、私は話題をふった。


「動物好きなんて、心外です」

「そうですか、私はあなたがあの淫獣に片想いしている方が心外ですね」

「なら、白澤様が神獣化したら好きになれますか?」


今まで見たことがないくらい、すごく顔を歪めていた。

鬼灯様がお怒りの時だってこんな顔はしなかった、今の質問は愚問だったらしい。犬猿の仲で有名な彼らだ、私ももっと気の回った話題を振ればよかった。動物いっぱいの地獄の話をしていればこんな顔をさせなかった、下を向いて箒を握っていると、頭の上にふんわりと柔らかい塊を乗せられた。なんだろう、戸惑いながらも手を添えてみると、ぬいぐるみが乗せられている。


「あの、鬼灯様」

「ネガティブに考えるのは大間違いです。貴方はアナタで自信を持ってください」

「なんで、そんな優しくするんですか」

「泣き出しそうな顔をしていました。昔の私のようです」


鬼灯様の過去は全く知らない。
きっと悲しいことでもあったんだろう、根掘り葉掘り聞くつもりはないけれど、心配してくれてるんだなぁって幸せに感じた。

片手だけでなく、両手で乗せられたぬいぐるみを触っていると持っていた箒は床に直面する。


「そういう顔をするのは、もう、私だけでいいんです」


ぬいぐるみを置いたまま私の頭を撫でて、慰めるような言葉をかける鬼灯様に私は顔を合わせることはできない。

こんなにも優しくしてくれる事なんて、なかったからどうしていいか私は迷っている。だから、撫でてくれる手のぬくもりを感じた。

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