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この船は木造で出来ているから歩くと所々でギシギシと、木材が軋んだ音が船内に響いてしまう。


気づかれないようにそっと歩くために板目に沿って足を進めていると、ある部屋にたどり着いた。


この船の船長が寝ている部屋だ、そう思うと私は思わず笑みが溢れる。
三億円がそこに転がっていると感じるとすぐに入って殺してあげたくなる。
落ち着こうと深呼吸をして部屋の扉を開ける前に自分が持ってきたナイフを確かめるためにポケットを探った。
ちゃんとあった、そのはずみなのか自分の指を怪我してしまった。
どうでもいい、私はそう心の中で吐き捨てるように言って扉を開いた。
寝ている船長は私がこれからすることを毛ほども知らぬような顔をしていて、私は「バカだなぁ」と小さくほくそ笑んだ。


そうして、私はナイフを両手で持ってそのまま船長に振り下ろした。



「なぁ、もうやめねーか、ナマエ」



私の腕に巻き付いたゴムのような腕、モンキー・D・ルフィの腕だ。
パッチリと開かれた目に一瞬だけそのまま吸い込まれるような感覚がした。
すぐに腕を話してもらうように体ごと抵抗してみるが外れない。



「っおき、起きてた!?」

「ナマエ、俺と一緒に寝たいなら」

「断じてない」



真面目そうな顔でそう言うと、ルフィはまた一層難しそうな顔をしてあぐらをかいた。
腕は話してもらったけど、この状態じゃ私がコイツに食われる。
そこらへんの床に座っていると、視線が感じたので顔を上げてみるとすぐ近くにルフィの顔があった。


三億円が目の前で私に対して必死に悩んでいると思うと、変な気持ちになる。



「ならどうして毎晩来るんだ?俺はナマエの心の闇を分かることはできねーけど、それくらいなら俺だってできる!」

「…ふざけんな!」

「おこんなって」

「怒ってねーし!ってかあんた私がしようとしたことわかってんだろうが、なんでそんなに構うんだよ」

「構っちゃ悪いかよ!
好きな女が必死に暗がりから抜け出そうとしているのを俺は黙って見過ごすわけには行かねえ!」

「またそんな戯言!いいかげんにしろっ私のことなんてどうでもいいんだろうが!」

「っ!ナマエ!」



言い争いをしているとルフィは私の腕をもう一度掴んで引っ張った。
とっさのことで戦闘態勢には入れなかった自分に腹が立つ、ここまで心を乱されるなんてっ。目の前にいる人すら縛り上げることができないっ。



「嘘じゃねえっ、俺はお前が好きだ。ぜってぇ助ける!」

「…信じて、良いのか?」

「おう、任せとけ、お前を助けてやるからお前は俺の隣で待ってろ」

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