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シャカシャカ…自転車でいつもの道を急いで走っている。そこには二人の姿、華奢な男が自転車のペダルを踏んでいて、ショートカットでカチューシャをつけている女はその男の背中にくっついている。
二人乗りは原則禁止だが、この海岸通りは車の通りはあまりないし、警察も通らない。
基本通るのはこの二人くらいだけだった。あとはお年寄りが通るくらい。
女は拳を上げて、大きな声で暴走族のように騒いでいる。
「ルフィ、飛ばそう飛ばそう!!」
「おう!落っこちんなよー!」
ギュッと力強く腰に巻き付いた女は、さぞかし嬉しそうに笑っていた。男はシャツをなびかせながら自転車を力いっぱい、漕いでいた。びゅんびゅんと風を切る音が、耳障りだが、太陽がさんさんと輝いているので涼しい。
「はぁ、涼しい」
「俺ばっかり漕いでるのはずるい、交代だ」
「いいじゃない、ほら、文句言わないで!みんな待ってるんだから」
これから仲間と合流するのだ。料理が得意のサンジがバーベキューをすると言ったのでそれでみんなは集まるのだ。
このふたりは職員室でシャンクス先生に成績が悪いと、目一杯怒られてきたのだ。
キラキラと太陽に反射する、海がサファイアのよう。
「そういや、お前髪の毛切ったろ」
ズバリと言われた事実に女は驚嘆。実は誰にも気づかれないようにカチューシャで隠していたので、誰にも言われなかったのだ。その中で今日、初めて気づかれた相手がバカで有名な男、ルフィ。ナマエは肩を揺らして、目をルフィの背中に向けてみる。黒い髪の毛がつややかで、なめらか、華奢だが男らしい背中にドキっと胸がはねた。
「え、なんでわかった!?」
「いっつもみてるからだ、にしし!そのよくわかんない布で隠したって無駄だぞ!」
「お見通しってわけかーってかこれはカチューシャですおバカルフィくん」
「馬鹿とは失敬な!
もっと飛ばすからな〜振りほどかれないように気をつけろよ」
「はいはいって、わ!」
先ほどより早くなった自転車に、怖がった。「わースッゲェ!!」という能天気なルフィの声に苛立ちながら、顔を背中にうずめた。結局このバカは、気持ちに気づかないんだ…ナマエは軽く腕の力を緩めた。曲がり角に差し掛かった時でさえも、強がるように力を軽くしていたが「落ちるからちゃんとつかまれ!」といったので仕方なく力を強める。
「うを!となり見てみろ!海がスッゲェきれいだぞ!」
「本当だ…綺麗…」
「なぁ、ナマエ」
「んー?って、ちょっと立ちこぎはナシ!あっぶな」
いきなり立ちこぎし始めたルフィに大声を上げて叱つすると、悪気なさそうな声で返事をする。
「悪ィ、悪ィ。あのよ〜俺さぁ」
「うん」
「お前のこと好きかもしれねぇ」
「え、今なんと」
「なんでもねー!」
っと言うことは「両思い…?」というつぶやきが、反射のように紡がれた。茶化そうとするルフィにもう一度、言って欲しいと思い、ナマエはわざと意地悪を仕掛ける。
「こら、ごまかすなぁー!聞こえてたよ、ルフィ。私もルフィのことが」
「ナマエを見てるとなんだか胸がギューッとなるんだ、それサンジに聞いたら恋だってよ」
遮るように言われた言葉に口を尖らせるが、サンジ、という声が聞こえてジロリとルフィをみた。はじめてルフィの照れた顔を見た、と心なかでナマエは軽く感動をした。
こんな姿を見るなんてめったにないだろう。麦わら帽子が、ふんわり上がると、ルフィは「おっといっけね」という声を出して器用に片手で、飛ばされるのを防いだ。
「ほかになんか吹き込まれただろう?」
「まぁな、でも俺は片想いでいいだ」
「…じゃあ私も片思いでいいぞーバカルフィ!」
「誰に片思いだ?なぁ、教えてくれよ!?」
「それはねールフィだよー!」
「そうなのか!?なぁ、片想いと片思いがぶつかったらなんなんだー?」
「私もわからないからナミさんにでも教えてもらえ!」
「じゃあ一緒に聞きに行くぞ!絶対だぞ!」
「ハイハイ!ちょ、ちゃんと前見て!」
「にしし、掴まっとけよ!」
「何度目なんだよ、その言葉」
「何回でも言ってやるよ!」
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