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土砂降りの雨の中で、ぽつんと私は立っていた。周りにはたくさんの花があった、しかし雨に濡れていてしんなりしている。加えて云うならば雨粒をだらしなく、抗うこともなくただただ、滴らせていた。目の前にはちょっとだけ浮き上がった土があって、私は言葉をなくす。


「何やってんだ?お嬢さん」


赤い髪の毛の年上の人が私に聞いた。うまく答えられない私はずっと黙っている、普通の人ならばこんな私を嫌うし「可愛げのない子」と認識される。心が寛大な彼は私の頭を数回ポンポンと優しく叩いた。まるで大人が幼子をあやすような素振り。


「一人なんて寂しいだろう」

「…」

「一緒に来ねえか?」


優しく私に諭すように言う赤髪の彼は、私を抱きしめた。ギュっとはれものを扱うかのような抱きしめ方に戸惑いを隠せない。今までそんな扱いを受けたことがないから、小さく声を漏らす。


「大丈夫だ、もう一人じゃねえ」

「…っ、っ」


何を読み取ったんだろう、私はひとりがさみしいとかは考えていない。ただぼんやりここにいただけなのに、なぜだろう、涙が止まらなかった。嗚咽を殺して涙を止めようと腕を伸ばすけど、赤髪の彼は拒んだ。


「泣かなくていい、もうお前に敵なんていない」

「っ…ぅ、ふっ」

「だからな」

「…っ」

「同情なんてするな」

「っ、ぅ、ふっ…」

「こいつらに同情なんてくれてやるな」

「っ、で、も…っ」

「いいか、お嬢さん。お嬢さんにはちゃんと名前だって、自由を手にする権利だってあるんだ。人一人に囚われちゃいけねぇ」


そう、目の前にある簡素なお墓は今までの領主様のもの。この人が怖くて私はここから動けない、でも人生なんてそんなもんなんだと言い聞かせていたのは、他でもない私自身でした。赤髪の彼がそう言ってくれるけど、そんなもんだと確証させたのは私。
もしかしたら今まで私を虐げてきた領主様よりすごく悪い人かもしれない。
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