その他短編 | ナノ

魅惑の生足
外国から輸入された服を私は身にまとってみる。嗅いだこともない匂いがして、私はなんだか幸せになった。髪の毛は教えられた通りに結ってみると、服にとても合っている。

嬉しくなって、別の部屋で先生とお酒を酌み交わすギンコのところへ走っていく。小さい時から、ギンコにはもうちょっとしおらしくしておけと言われたけど、黙っていうことを聞く性分じゃないことくらい、もう彼にはお見通しだった。口元を緩めて頭を撫でてもらうことは度々。見えてきた部屋、私は再度髪の毛を直して障子を開けた。


「見て!ギンコっ」

「…おーいい眺め。生足なんてそうそう拝めるもんじゃねぇな」


ふわんりと布を翻すと先生は酒を吹いた。失礼な、対照的にギンコはニヤニヤと笑って私に近づいてきた。一緒に酒でも飲もうというお誘いだと思っていたら、頬を引っ張る。悪いことといいことは截然する彼だから、これは怒っていると捉えてもおかしくないだろう。


「男の前でそんな格好するもんじゃねぇ」


いい眺めと言っていたさっきの野郎は誰だ。私の目はごまかせられないぞ。

緋色の目を新緑の色の目に合わせると、ごまかせられるような雰囲気なんてなかった。先生に視線を向けると別の部屋に移動しようと、足音立てないように動いていた。一方的に言われるのは悔しいので私は、持ち合わせている理屈で言葉を返す。


「でも、外国の人はこういう格好をするんだよ?おかしくないよ」

「だから、そういうことじゃねぇんだよ。薄っぺらい格好で男の前をうろつくのは少々気を許しすぎなんじゃねぇの?」

「ギンコに褒めてもらうために着てきたの」

「だからって、誘うような姿でここまで走ってきたのは」


言いかけた途端、ギンコは私の頬から手を離した。私の手首を掴むなり畳の上に叩きつけ、ゆっくりと近づいて来る。
唇をかみしめてギンコを見ると、蟲煙草を灰皿の上に乱雑において私の上に乗りかかる。重たい、ギンコに私は「内蔵的なもの出る!」と叫んでみると、煙混じりの息を吐きかけられた。むせていると「お前には色気の欠片もねぇな」と口端を釣り上げて楽しそうに言った。演技をしているんだとは、私は口が裂けても言わない。