アンニュイな授業で、口を開いたこのクラスの雰囲気は嫌いだ。胡散臭い友情の匂い、ぐちゃぐちゃになった陳腐なカップルの匂い。さっさと卒業したくなる、できないあいだは早く自分の部活に行きたい。嗚呼、あと。もうひとつ嫌な理由がある。
あるひとりの少女が何かをするだけで静かになる。
白い目を向けて侮蔑するような陰口をたたいている。どうかしたい、なんて正義は俺にはあいにく持ち合わせていない。けれど、クラスの風習を見習うなんて毛頭ない。だから。
「ミョウジ、俺とペア組んでくれナァイ?」
俺は手を伸ばす。
***
彼女は、猫っ毛でふわふわしている髪型をひとまとめにしていて、前髪は少し長い。ちゃんと目を見たことがないけれど、きっと綺麗な目をしているんだろう、彼女の匂いは嫌いじゃない。癖のある匂いだけど。小柄っていうわけじゃないけど、普通の体で女の子らしさを主張する肉でもない。書く文字も達筆、ということでもない、平凡のハズなのに平凡に入ることもできない彼女になぜか俺は惹かれた。
授業で一ヶ月、ひとつの課題を仕上げるために組んだ彼女は自分がなぜ誘われたのか、恐怖心を抱いていた。
遠い昔にでも嫌がらせを受けたんだろう。
けれど俺はそんなちっぽけな野郎じゃない。興味本位で近づいた、なんて言ったら失礼か。
「荒北、最近変わったことでもあったのか」
「…別にィ」
福チャンは俺の顔を見て、たった一言だけ疑問を投げかけた。ベラベラ喋るような柄じゃないのは分かっている、だから俺は何も言わない。部活で私情を持ち込んで、相手を狂わせるようなことはしたくないのも本心。
「…」
「…」
「だーっわかったからそんな見るんじゃねぇヨ!」
周りからの視線がうるさくて、俺はしびれを切らした。結局建前と行動は一致しない。
← →