長編 | ナノ


ダイヤモンドが似合うトカゲ

入学式が始まる。

生徒を誘導する先生方、拍手で迎えるダイヤモンドが似合うトカゲたち。塗りたくった化粧の匂いで頭がくらくらしそうだ、私は仏頂面で行進する。
座った椅子は冷たくて、体育館の冷たさと同期していた。ぼんやりしていると、名前を読み上げることになった。私の名前を読み上げられた時、気の抜けたような返事を返した。トカゲたちの中に母の姿はないから怒られることはない。


教室に戻るとトカゲの子供たちが必死に友達作りしていた。

おままごとにそんな熱心でお疲れ様。ばっかみたいなんて直接言わないわ。だって直接言ったら前頭葉が発達しきっていない青年期の子供たちには大きな刺激になり、一歩踏み違えると過激な事件を引き起こすことになる。そこまで私の頭は弱くない。きゃあきゃあと、わぁわぁと騒いでいるトカゲの子供たちはずいぶんと滑稽だった。相手に合わせて色を変える…いいや、色を変えるのはトカゲではなくカメレオンだ。言い方が悪かった、そう、相手に合わせて尻尾を切る長さを変える。自分に都合のいいトカゲだったら切らない、支配下に置けないトカゲだったら尻尾を振り切る。もうそれは面白いほどに。


数人だけ声をかけようと、こちらの様子をうかがっていたトカゲがいたが私は音楽を聴き始める。トカゲなんか相手にしないわ。


数分後、ぞろぞろ入ってくるトカゲ。同時に教師も入ってくる、教師と言うより飼育員だな。
一通り伝えることは伝えたらしい、挨拶がてらに一人一人名前を呼んで自己紹介するよう勧める。適当に済ましちゃえばどうだっていいや。


目の前の男の子が立ち上がった。


「手嶋純太、えっと自転車競技やってます」

「おい、手嶋敬語使わなくていいぞーイケメンぶるなって」

「うっせ、いいんだよ。あーとりあえずよろしく」


軽薄そうな男だ。心の中でそう思っただけで口にはしなかった。口は災いの門という。確かにそうだ、それは私が十分に知っている。次は私の番らしい、私は立ち上がって当たり障りのない自己紹介をした。その時だった、手嶋は私の顔をじっと見ていたのだ。