そう簡単に花は見つからない金髪の男は私に向かって、欲しいと言った。はは、冗談も程々にして欲しい。こんな傷物の、女としての魅力も全て捨てて可愛げ一つもない私を欲しいなんて蓼食う虫も好き好き。
「私は売り物じゃないよ、あんた物好きだね」
生臭い血がついた刀をひと振りして、刃こぼれがないか注意を払う。鞘に自分の刀を収めると鈍いとがなる。そろそろガタがきてしまった。
膝に刺さった毒針を抜いて傷口に口を当てて、毒を吐き出すとピリリと痛みが感じられる。未だ暴れている主人が煩わしくなりクナイで走り回るのを止めさせる。金髪の男の方をよく見ると、凛々しい顔立ちで、いい男だ。
護衛の二人も端正な顔立ち。さぞかし女性に困ったことはないんだろうね。
「買う気持ちはない、お前のその力が欲しい」
断片的な言葉が多くて、首をかしげる。そんな私を察して、茶髪のくせ毛の男は笑って私に近づいて訳した言葉をかける。
「要するに寿一はおめさんが売り物でもなければ普通の人でもなんでもいいから、うちの傘下に下って欲しいって言ってんのさ。もちろん給金はここよりも多めにもらえる。どうだ?おめさんもこちら側に来ないか?」
こちら側というのは、常闇の町から太陽があたる町に来ないかという意味か。
「今すぐには返事を出せない、後日飛脚を送る」
「む、いい返事を待っている」
「じゃ、行くぞ。靖友」
靖友。そう呼ばれた男娼は門を出て行く。その名前は昔、両親から聞いたことはない。
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