嗚呼、心配でならない「誰か待ってるのか、ミョウジ」
「うん。荒北君を待ってる。今日は荒北くんをお家にご招待するんだ」
部室の外で荒北を待ち伏せしているミョウジに声をかけた。前髪は長いままで、ちゃんと目は見えないけれど幸せそうなオーラを出していた。俺が話しかけると、一瞬だけびくつくが少しは打ち解けていると思う。
だが、荒北を家に招待するだと?聞き捨てならんな。
「まて、ミョウジ。それは荒北を家族にご紹介するという体でいいのか」
「ん?私、お母さんたちと一緒に住んでないよ」
「…いやいや、ミョウジ。早まるな。確かに早婚は国に貢献することになるが、それでいいのか」
「何の話、国に貢献?」
首をかしげて俺を見つめ直す。今まで男性経験がないに等しかったからか、荒北がよからぬことを考えたら従順に従ってしまいそうで怖い。俺はミョウジの肩を掴んで説得する。
「ミョウジ、荒北は男だ」
「カミングアウトしなくても知ってるよ」
「無防備に家に入れるなど…?」と、言葉を続けようとした。ミョウジの家は森の奥にあると言っていたが、実際本当かどうかはわからない。昔、好奇心と、彼女に近づきたいという思いで森の奥へと入ったが見つけることはできなかったのだ。荒北にもそう言って、どこかへ迷わせる気か。俺はミョウジを牽制しようと口を挟もうとしたとき。
「ッセ、さっさと帰れヨ東堂」
「荒北、お前見損なったぞ!夜にミョウジの家を訪問するなどっ」
「アァ?前にも行ったことあるケドォ、コイツの言ったとおり森ん中にあるけどぜってぇテメェには教えねぇからナ。ま、山神のテメェにも分かんねぇところにあるからナ」
「ミョウジ、荒北は調子に乗ったら手がつけられないからな」
「誰が調子乗ってるって?」
「さて、俺は巻ちゃんに電話してこよう」
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