短編 | ナノ

願います
俺の友達は、いいやこいつは友達以上だ、名づけることができないから名前で伝える。ナマエは本当にかわいそうだと思う。高校一年の時は同じクラスで、俺が腐っていても気にすることなく、いや、あいつは気にしていたけど、余計俺が起こらないように、癪に障らないように友好的に話しかけて、外に連れ出してくれた。何も聞こえない、ずっと遠くまで、周りに咎められない範囲で付き合ってくれた。

フクチャンと出会って、自転車を始めた、そういうとナマエは自分がやっていないのにもかかわらず俺が困らない程度の自転車の知識をわかりやすく教えてくれた、授業サボって遅れていた勉強も教えてくれた。あの時、俺が疲れているからとか理由こねつけてノートをまとめたプリント作ってわざわざ消灯時間ギリギリに届けに来たよな。


けど、二年になってから、ナマエの笑顔がだんだん消えていった。

二年の時も同じクラスだった。だから、なんかあったノォ?くらいしか聞けなかった。気の利いた言葉なんて俺は知らない。後から東堂から聞いた話だが、ナマエの一番大事な友達がほかのクラスでいじめにあって自主退学したんだと。その一番大事なお友達は持病があって運動ができなかった。それがきっかけらしい。周りの理解が足りないってこういうことか。きっとナマエの奴のことだから、守れなかった自分が悪い、そして守れなかった自分がこのまま学校に通っていていいのか迷っているんだろう。心の底から心配しすぎなんだよ。少しくらい肩の力を抜けよ。


三年になってからは、一度も笑顔を見たことがない。それに三年は違うクラスになっちまったからな。三年になってまた、ナマエの友達が辞めたんだと。今度は一人じゃなくて二人、いっぺんに。理由はよく知らない。ナマエが笑顔を失った後でも、話し方は変わらず「荒北ァ〜辞書貸して、忘れちった」なんて、わざわざ遠く離れた俺のクラスまで来て俺が一人の時、どうでもいい話をしに来たり、辞書や教科書を借りに来る。嘘つくなよ、お前はロッカーの中に全部教科書とか辞書も入ってんだろ。
だから、もう無理に誰かを守ろうと躍起にならなくていいだろ。


東堂と俺が見つけなかったらあのまま自分の腕をかみちぎっていただろう。唇から真っ赤な血が滴り落ちて、俺が取り押さえた時、腕はまだつながっていたが、血は大量。うつろな目二つが俺を捉える。ゾクリと背筋が凍る。

今、校医を呼んでくると東堂は走った。ナマエは鋭くとがった犬歯を見せて取り押さえられている腕ではなく反対の腕を噛みつこうとした、俺はナマエに恩義がある。でも、悪い。


お前の死にたがりな望みはかなえてあげられねぇ。

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