もう一度お願いします、女王様
黒田くんは男女問わず愛されている。それは彼は要領がよくて、社交的で顔立ちがいいからだろう。けど、黒田君は最近、私には苛立ちしか見せない。そりゃ、私はみんなと同じ基準で彼を好きになってはない。
「アンタってひねくれ者なのかよ、見た目によらず面戸くせぇ女だな」
体育日誌を書き終えたので体育職員室へ向かう最中、黒田君も体育日誌を届けに行ったのか、ばったり出会った。同じクラスだけど一度もしゃべったことだってないし、遊んだことだってない。なぜこんなにも冷たい視線と、辛口を叩くのか理解できない。それにひねくれ者でめんどくさいってずいぶん上から目線で私を貶している。この男は何様だ、小さい国の王様のようにふるまう彼が嫌いになった瞬間だった。
「ひねくれ者っていうか、客観的な視線がまず違うのよ、アンタは」
友人に相談したところ、気にするななんて言われてしまった。ひねくれているのか、やっぱり。変える準備をしながら私は自分を見つめなおした。確かに、人よりちょっと変な観点から口をはさむことは多いし、黒田君のこともまっすぐ見ていい人だと思っていないし。もやもや頭の中で考えながら教室から出ていこうとしたとき、黒田君に呼び止められた。しかも「待てよ、ひねくれ女」なんて。
「なんでお前は俺のことを好きにならねぇんだよ」
教室に引き戻されて、鞄を机に置いて椅子に座って彼が口を開くのを待っていたら黒田君は私を逃がさないように私の足の間に足を挟み込んで囲い込んだ。これは、みんながきゃあきゃあと黄色い声で喜ぶ股ドンと言われるものじゃないか。この男にされるのはなぜか腹が立つ。
「みーんなは、俺を好きになってくれるのにお前は何で俺を嫌いになる一方なんだよ」
「私はひねくれ者でめんどくさい女ですから」
「そういう理由はいらねぇんだよ、どうしたらお前は俺を好きになる」
小さな王様が余裕の笑みを浮かべながら言ったので私は、空いている利き手で拳を作って黒田君の顔面にめり込ませた。ゴン、っと鈍いの音が聞こえてサァっと自分の顔が青ざめていくのが分かった。そっと自分の拳を黒田君の顔から外すと、そこには少しだけ顔の赤い黒田君。
「ご、ごめ、ごめっん」
焦りと、彼が怒るんじゃないかという不安でどもっていると、黒田君はもっと顔を赤らめてとんでもないことを口走った。
この言葉はクラスメイトには言えない。
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