本音「黒田くん、私はとっても幸せだよ。なんて言ったって目の前で荒北くんが、猫と」
俺の隣にいる女、ナマエ先輩は一言でまとめるなら荒北さん中毒者だ。ナマエ先輩がどうしてそんなに荒北さんが大好きかというと、高校一年の時話しかけてくれたらしい。この話を聞いて、ナマエ先輩がボッチ系女子だと改めて知った。
ベンチに座って、とびかかる猫と戯れている荒北さんの姿を顔を赤らめながら見ている先輩の隣で俺はイライラさせながら昼食を食らった。どうして俺が隣にいるのに違う相手ばっかり見てるんだよ。
「よだれ出てますよ、ナマエ先輩」
「だって、だって!」
興奮して先輩は俺に飛びついてきた。突進してきたに等しいが、俺の腰あたりで先輩はじたばたしていて、荒北さんのいいところばかりを口に出している。
それを黙って聞いている俺をほめたたえてほしい、俺は先輩を支えながら辛口で答える。
「日本語喋ってください、あと荒北さんが迷惑そうな顔をしてます」
「こっち見てる!?」
「喜んでどうすんですか!」
「黒田くんも幸せだと思わない?」
「思いませんし、ていうかアンタは俺が隣にいるのにそういうことばっかり」
俺が本音を交えながら先輩に文句を言っているのに先輩はもう、荒北さんの姿を食い入るように見ている。もうイラつく。俺は支えているナマエ先輩を引っ張って抱きしめた。ふんわり、先輩が使っているシャンプーの匂いが鼻についた。
「なんでもかんでも荒北さんって…いい加減こっち振り向けよ」
こらえたように俺が先輩に伝えると、一瞬だけ、先輩の体が硬直したようだったが、すぐに解けて、先輩から俺の体に腕を絡めた。俺は恥ずかしくなって訳が分からなくなって言った。
「っ、今のは謝らねぇからな」
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