短編 | ナノ

恋愛ウイルス


部活が終わるまで待てと言われて待つのが私の放課後の役目。部活に入らないのかと聞かれたけれど、部活に向いてないと思う。性格的な問題で、一つに没頭するのは得意だけど誰かとともに何かをするのは苦手だからだ。

図書室からぼんやりと兄の姿を見ていた時、私の胸はときめいた。あ、兄ではなく兄のそばにいる男性に。今日もめげずに私はアタックする。


「金城先輩今日も好きです」

「うるさいナマエあっち行け」

「兄さんこそあっち行って、もう帰ってこないで」


牙をむくと兄は私の頭を拳で殴った。手加減なしに殴ってきたので痛みにうずくまっていると、誰かが背中をなでてくれた。兄と違ってその人はやさしい。


「今泉、妹にそういうことを言ってしまったら」


金城先輩だ。急に恥ずかしくなって顔から耳も赤くなっていった。顔を上げられない。


「大丈夫です、こいつ馬鹿なんで」

誰がバカだくそ兄貴。

「そんなことない、ナマエは利口だ」


ドキリと胸がはねる。金城先輩のやさしい声と、男性特有の低い声が耳をくすぐる。私は兄の方を見て、真面目な顔で一言告げた。


「兄さん、私このまま金城先輩とランデブーします」

「金城さん、そいつから離れてください、バカがうつります」

「ウイルスのような扱いをしないでちょうだい」


私が言い切ると、兄さんは少しだけ傷ついた顔をしてそのまま崩れ落ちた。忘れてた、兄はメンタルが弱いんだった。私は兄のほうに駆け寄って「ご、ごめん、兄さん」と声をかける。金城先輩も励ましていた、なんか、ほんと、すみません。