短編 | ナノ

シスコン、ブラコン


「ナマエ、そんな顔をするな。今泉はお前が思っているような男じゃない」

「いや、金城さん。初対面ですし、その。警戒心があっても仕方がないと思います」

「だが…」


双子と言っても、二卵性だからなのか兄とは全く違う性格を持っている。やさしさを持ち合わせている兄と対照的に私はとげのある性格だ。たまたま、私が家の鍵を忘れてきてしまい、兄しか持っていないので自転車競技部の部室へ訪れたとき、背の高い、細身の男の人が私に声をかけてきた。見知らぬ相手に睨みつけて兄の登場を待っていたら、案の定兄は駆けつけて冒頭に至る。


「兄さん、鍵を忘れてしまった。欲しい」

「なら少し待っててくれ、一緒に帰ろう」


頭をなでて、兄は部室へ戻った。それに続いて、細身の男も部室へ行くのかと思ったら、私の目の前に突っ立って何か言おうとしていた。私はそっぽを向いた。


「金城さんの妹、なんですか」

「そー見えないのは、しかたがない。兄さんと違って私はトゲのある人間だから」

「そこまで言ってないだろ」


めんどくさそうに顔を歪める細身の男を横目に兄の帰りを待ち望んでいると、ふと、さっきの言葉を思い出した。兄はこの男のことを今泉と呼んでいた。もしかして、インターハイメンバーの今泉ってこの男なのか。振り返ってもう一度見ると目があう。なんて言葉をかけたらいいのか。いくらなんでも、兄の登場が遅い。絶対これはわざと時間をかけてる。


「私は、こう、口がうまいわけじゃないから、ちゃんと言えないけど。兄のこと、頼みます」

「なんで年上のアンタが敬語なんだよ、ほんと飽きないな」

「、私のこと知ってるような口ぶりなんだけど」

「まあ、こっちは黙っててもアンタの兄さんから聞くんで」