試練は受け付け始めましたあの人すごく怖い。噂によると、一年生の頃はヤンキーだったらしい。猫背で、足癖悪くて、口がひん曲がってて、目つきが悪くて、体は細くて、口は悪い。絶対関わりたくない、というか、離したくないし同じクラスになりたくないナンバーワン。
遠い昔に、あの男の人にぶつかって怒鳴られたことがある。私のメンタルはズタボロ。
神様、どうか私にお恵みを。罪深き私にどうか…しかし、無残にもその願いは叶わない。
「ナマエ、ドンマイというしかほかにかける言葉ない」
「マジで泣いていいスか」
クラス替えも、隣の席も私の思い通りにいかなかった。有名なシンガーソングライターの作詞した一文に「人生は試練だ」と書いてあった。誰のため、いつのための試練だ。そういった試練を私は受付ておりませぬ。重たい足取りで私は席を移動する。後ろの席で私を待ち構えているように座っている荒北靖友くん。おわった、人生終わった。これくらいで終わることなんてないよ、と元気づけてくれた友達に少なからず殺意を抱く。
「よろしくナァ、ナマエチャン」
「な、んで名前知ってるの」
「さっき席替えの時書いてあっただろ」
「っ」
これアカンて。私、メンタルとフィジカル潰されるって。その前に絶対私のことを覚えてないハズ。だから今日から再スタートするのだ。荒北靖友くんの左の席に腰を下ろして、カバンを横にかける。一連の動作だけど心臓が張り裂けそうなくらい、怖い。平静を保って話してみるけど手先が震えている。
「ナマエチャンて文学部だろ」
「うん、そうだよ」
「あー蒸し返すようで悪いんだけど、前は悪かったな」
はっと私は顔を上げて、荒北靖友くんを見ると心配そうな眼差しをしていた。
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