短編 | ナノ

太陽に抱かれて
*注意、特殊な書き方をしています



私は兄のように頭がいいわけでもないし、顔立ちだっていいわけじゃないわ。それに普通の女の子のようにふわふわしてて、可愛いわけじゃないの。こんなひねくれ者の女でもね、心底憎んでしまう相手だって簡単にできてしまうの。残念ね、貴方。ひねくれ者でめんどくさい私に目をつけられたのは本当にかわいそう。


そう言って私が意地悪そうに笑ってても目の前の金髪の男は片眉ひとつ動かさない。腕を組んで私の話を聞き入っていた。

人間の顔の左半分は真実を表し、右半分は演技ができると聞いていたけれど彼はどっちも動かさなかった。
彼は本当に、兄に怪我をさせたことを後悔しているのだろうか。


一方的に話しかけて一方的に腹を立てるのも面白くないから私は、ねえ、聞いてるの?ツンボなの?と眉間にしわを寄せながら話しかける。


目の前の男は、ああ聞いている。お前の兄、金城にけがをさせてしまったことはひどく後悔している。すまなかった。


そういって頭を下げる。金髪の頭が私の視線と同じくらいになった。普通の女の子よりも低い身長の私は少しだけ、目の前の男が大男に見えて怖くなった。

腹が立ったとはいえ、千葉から神奈川まで一人で来て大男に頭を下げさせるなんて我ながらすごい。

金髪の男の後ろで、黒髪の不細工の男がきゃんきゃん吠えているが耳に入らない。



…謝るという気持ちがあるなら、それでいい。なーんか拍子抜けしちゃった。


私はそう言ってしゃがみこんだ。
拍子抜けとは、どういうことだ。
頭上からそういう声が聞こえた。金髪の男の声だ。私は地面を見ながら答える。


もしも、真護の学校に来て謝るだけ謝ってあとは知らんぷり、みたいな男だったら殴ってやろうって思ってたのよ。


視界が濁って、地面をほんの少しだけ濡らした。ふんわりと風が吹いた。あ、パンツ見えてないよね。突然、私の背中と足の間に人の腕が通って、地面が離れた。誰かに抱っこされている状態だ。私は顔を上げて抱いている相手を見ると、金髪の男だった。


何度か瞬きしていると、寒いだろ、部室まで連れていく。それにお前は金城に何も告げずにここに来たんだろ。今、東堂が巻島に連絡している。少しだけ我慢してほしい。


ねえ、フクトミさん、どうしてひねくれ者でめんどくさい女にそんなに構うの?要件はもう終わったのよ、帰れとか言わないの?


俺はそんなこと言わない。すまない、お前の名前を教えてくれ。


金城、金城ナマエ。フクトミさんって少し真護に似てる。真護に、どこが似てるんだ。太陽みたいに暖かい、私は冷たいからすごく惹かれる。


ム、そうか。お前が冷たいとは思わない、お前は正直な女だ。


げ、金城の妹なんでフクチャンに御姫様抱っこされてんだヨ!さっさと退けよ!


荒北、あまり騒ぐな。ナマエが泣いてしまう。


な、泣いてない!


そうか、だがさっきは。


フク!金城と通じたぞ!お前の読み通り、金城は妹さんがこっちにいる事知らなかったようだ。それなのか、すごく苛立っているぞ。ナマエ、電話に出るか。


嫌。


なら俺が出よう。


じゃあ私が電話持つ。


ム、頼む。いや、そこは妹チャンが下りるべきじゃないの?


うるさい細目。


んだとクソガキ!


荒北、黙らんか。


ッセ!


金城か、福富だ。ああ、久しぶりだ。ナマエがお前のところで迷惑をかけたようだな。いいや、迷惑はかけていない。ナマエは今日中に返した方がいいな。


あ、私フクトミさんの所に泊まるつもりだから、真護、お父様とお母様によろしくって伝えて。ちなみに処女喪失してくっちょ、細目!なんで叩くのよ!


すまない、ナマエが奇行に走った時は福富、容赦なく外に投げ飛ばしていい。