短編 | ナノ

これが出会いなんだ
「…っクソが」

「投げる時の姿勢が悪ィンだヨ、お前の場合」


舌打ち混じりに吐き出した言葉は、そこらへんの可愛らしい女の子が口語するものではない。どこかの不良のような口調であった。それくらいは自分自身深く理解している。ゴールを外したバスケットボールが自分の背後に飛んでいって、手を伸ばすが、右膝に痛みが走る。ギザギザの刃のサバイバルナイフで引き裂くような痛みに憂鬱し、仕方がなく歩いてボールを取りに行ったところで、知らない、細身の男に出会った。目つきが悪くて、猫背の男は片手に私が使用していたバスケットボールを持っている。

ゴールリングに投げつけるようにシュートするのが、もうできなくなってしまった自分に焦りを感じて何度もここで練習していた。その姿を見ていたと言わんばかりの的確な発言に私は顔を赤らめる。


「し、姿勢って」

「重心がぶれるような投げつけ方してるから、入らねぇんだ。右膝を庇いすぎて左足に負荷がかかりすぎてんの」

「…」

「その目、やめてくんナァイ?不審者じゃねぇんだけどぉ」


左手でヒョイっとボールを投げ渡す、その男は眉間にしわを寄せて盛大に口を歪める。よくもそこまで口を曲げることができるな。両手で包み込むように私はボールを受け取った。左足に負荷がかかりすぎてるってことは、もう少し左足の力を抜いてしまえばいい。後でそうしてみよう、木陰になっているところにバスケットボールを置いてご飯を食べようとしたら、男は「やめんの?」と不満げに口出しする。


「私がどうしようと勝手」

「アドバイスをすぐに活かせば忘れねぇヨ。それとも投げた拍子にパンツ見えるからか?」

「…っ!」

「気づけバァカ」