短編 | ナノ

純情ヲ捨テヨ
*病み、暴力表現注意



自分自身、もう歪んだ性格は戻せないことくらい知ってる。だからと言って何でもしていいわけじゃない。

もし俺が何かの天才で、資産も、名誉も持っていたら別かもしれないけど。副部長の座を手に入れて、厳しさを醸し出す。一方、部室で、三年生が卒業したことをいいことにして俺はマネージャーに無理強いを働く。


「うっ。っげほ、っごほ」


誰もいない部室の中で、付き合ってもいない彼女を押し倒してフラストレーションを目いっぱいぶちまける。

暴れだす彼女には「そんなに声出したらアンタの大好きな葦木場が駆けつけてくれるかもな、けどそんなことしたら部活に出られなくなるよな」とにやにやしながら俺が言うと涙を流し始める。

うざったい、葦木場の周りばっかりうろついてたくせに。押し倒して、見えないところを殴ったりけったりしていたら彼女は鈍い声を上げた後咳き込んだ。


「何それくらいで弱音あげちゃってんの、純情ぶってキモイ」


目の前で、咳き込み苦しそうな声を上げている彼女に罵声を浴びせると、俺ににらみを利かせた。ああ、こういう時だけは強がって、普段ならへらへら笑って葦木場のそばにいるのに。ほんとこいつはバカな女。

もう一度殴ってやろう、そう思って自分の拳をクッション性に欠ける女の腹へ力強く叩き込んだ。


「っう」

「おいおい、そこらへんに吐くんじゃねぇよ。部活で使うんだからよ」


「お前の大好きな葦木場だってここで着替えたりしてるんだぜ」なんて、笑いながら彼女に言うと涙を浮かべながら顔をゆがませた。たった一言、たった一人の男の名前を出しただけでこんなにも変わるなんてイイ玩具を見つけた。


「あいつの目の前で純情ぶるのもやめろよ、俺といる時みたいに皆に睨んでいればいいのに」

「っ、純情ぶってなんか」

「ああ、そうだよな。だってお前純情って言えないくらい汚いからな」

「うるさい、お前だって変わらないくせに」


「くそエリートが」と鼻で笑いやがった。荒北さんから習ったんだろう。けどその言葉は俺にとって怒りの琴線に触れる事だ。目の前に組み敷かれている女の顔が憎たらしい。ぶちん、と頭の中で糸が切れた音が聞こえた。


「見向きもされないブスのくせに、黙ってろ」