短編 | ナノ

カニバリズム
「いっつもお前って笑ってる割にはどす黒いこと考えてるよな?」


荒北靖友くん、彼は高校一年生からずっと同じクラスである。だから、少しなら彼のことを知っている。

匂いを嗅ぎ分ける、犬のような能力というかそういったものを持っている。

私にもそれくらい分けて欲しいくらいだ。話を元に戻すが、目の前でベプシを飲みながら悪評を絶え間なく言う。荒北くんに殺意を孕んでいないかと聞かれたら、めっちゃありますこれ。


「荒北くんって無神経だね」

「ッハ、どの口が言えたもんだヨ。匂うぜ、人を食べたいっていう雌犬臭」

「なにそれ、面白い話ね」


彼にはわかるみたいだ。私がいつも人を食べたいという感情を押しこめていると。口に出すことはできない、そりゃそうさ、言わなくてもわかるだろ。どこにも行き場所がないこの感情は、どうすることもできない。


「人間なのにどうしてそんな匂いがするんだろナァ?発情期ってヤツか?」

「んー?」

「あんまりはぐらかしてくれるなヨ?忠告も兼ねて言ってるワケなんだけどォ?」

「はは、じゃあありがたく拝聴するね」


ニコニコ笑顔で私は頬杖を付きながら、忠告を待っていると、一向に言葉は降りてこない。何があったんだとそう思って顔を上げると、そこには複雑そうな顔をしている荒北くんが口を開いては閉じての繰り返し。


「ねえ、言いたいなら、早く言ってよ」

「いいの、かよ。確証ないことを言ってお前は満足するのかよ」

「満足はしないけど、気になるの」


私が言い切ると、荒北くんはやっと忠告をした。