弓で奏でる見られていると、やっぱり緊張しちゃうな。
心の中で穏やかにつぶやいた。
「何度聴いてもお前の奏でる音楽は変わらないな」
真護はわたしのチェロを聞いてありのままの感想を伝えた。気の利いた言葉だって、美化された言葉だって知っているはずなのに彼は私には絶対そんなことをしなかった。それが私の成長の糧になり、血と成り肉となればいいんだけど、彼の言うとおり何度も練習しても変化を遂げない。
才能の開花すら起きない。
「そうだよね、私もそう思うんだよね」
「何か方法はないのか?」
真護は私の方に近づいて、飲み物を渡したと同時に隣に座った。ゴツゴツとした指先が私は気に入っている、触りたいけどそんな小さいことが重なって離れ離れになるのは嫌。曖昧な関係に居心地良さそうに呼吸をしているのは私なんだ、ごめんね。
聞かれた疑問に素直に答えたほうが、後から継ぎ足す嘘がめんどくさくなくていいだろう。
「方法?」
「ああ、師匠にはなんと言われているんだ」
「まだまだ、子供な音楽だって」
すねたように答えると、綺麗に微笑んだ彼は私の頭を撫でる。
くしゃくしゃと、女の子の扱いは慣れてませんって感じがした。
そう、私も彼も似ているんだ。
「子供か、確かに言えてるな。生まれたての、純粋さがある」
「ありがとう」
「で、どうなんだ?お前を変える方法は」
「恋をしたら変わるんだってさ、恋をして、誰かを愛したら。ま、私にはできないね」
「なら、俺としてみるか」
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