短編 | ナノ

誠実な男と妖艶な女の話
艶めかしい表情が似合う女性と言ったら彼女のことだと思う。俺にとって彼女はとってもきれいな女性だと思っている。肉付がよい体に、それほど高い声ではない、目つきは鋭く人の本心を見抜きそうだ。だが、世間では彼女のことを淫売女と言う人が多い。


実際そういったことをしているのか、聞いてみたところ彼女は不機嫌そうに「そんなことする暇あると思ってんの?」と答えていた。俺は「それはすまない」と笑って謝った。


それはつい先日の話だ。今日の彼女は少しだけ機嫌がよかった。普段から一人で行動することが多い彼女に俺は近づいて、じっと彼女の顔を見た。彼女の顔だけが好きだというわけじゃない、俺は彼女の全部を愛せる自信がある。彼女はたじろぐ姿も見せずに俺に話しかけた。


「金城、また私のこと見てる、エッチだなぁ」

「お前を見ているだけで性的な衝動は起きない。だが不快にさせてしまったなら謝る」

「金城はさ、どうしてそんなに私に話しかけるの?」

「お前が心から愛しているからだ、これは何度も言っているだろ」


彼女は俺の返事にちょっとだけ驚いたみたいだ。

何度も彼女に「愛している」と伝えているが、この場面で俺が言うのは予想してなかったんだろう。けど俺はあきらめない男だから、彼女を落とすためにはどんな手でも尽くすつもりだ。機嫌のいい彼女は俺をじっと見つめ始めた。まっすぐ見つめられると照れる。負けじと俺は彼女を見つめ続けた。


「ねえ、金城」

「なんだ、俺のことを愛してくれるようになったか」


冗談交じりに俺が彼女に言うと、彼女は「今は考え中なの」と答えた。

ようやっと本気で考えてくれるようになったか。粘り強く待った甲斐があった。そうして、幸せな気分になっている間に、彼女は俺の予想の範疇を超える言葉を吐きかけた。


「私さぁ、金城が望むセックスなんてできないけど」

「俺は好きな女と一緒にいるだけで幸せだ。無理強いをさせるほど性格は歪んでない」


確かに俺は彼女には艶めかしい表情が似合うと思っている。しかし、戸惑った顔も困った顔も幸せそうに笑っている顔だって好きだ。腕を組んでいる彼女を見て俺は小さく笑った。