短編 | ナノ

いつだって成長
どこかでスレている彼に私は突然告白された。学校の裏門にまで連れてこられて、真っ赤な顔でせがむ様に私に「付き合ってくれ」って言ったことは記憶に新しい。答えに困っていると、少しだけ泣きそうな顔になってぎゅっと私の腕を掴んだ。

案外女々しいところもあったみたいだ。

彼とは、この学校で有名の一年のイケメンオールラウンダー今泉くん。親衛隊まである、愛され男の子。接点はどこにあるの?と聞かれたら…私ははっきり言ってない。同じクラスでもない、部活も違う。中学校も違うし、小学校も別だ。私に何故告白するんだろう。きっと罰ゲームかなにかだろう。けれど、彼には罰ゲームをしあえるお友達がいない。

あ、サラっと失礼なこと言っちゃった。オブラートに包んで言うと物静かで誰かとつるむことを嫌う。



「今日も、一緒に帰ろう」

「うん」



でも最近変わったなと思うことがある。

嬉しそうな表情を出すようになったし、話すようになった。好きな音楽が一緒だったと同時に知ったとき、笑いあったこと。一方的だったキスもなぜかギクシャクして、やっとたどり着くような甘いキスになったし。



「…コレ、リア充の惚気だよね」

「、なにを言っているんだ?」

「あ、えっとね。なんか前よりすごく仲良しになったなぁって思ったの」

「確かに、前までの俺は尖っていたな」



苦笑いを浮かべて私の頭を撫でた。手のひらはちょっとだけ皮が厚みを帯びていて、細い指がくすぐったい。目を細めて気持ち良さそうに頬を緩ませていると、撫でる手を止めた今泉くん。
目を開いて私は顔を上げてみると、音もなく迫ってくる整った顔。息がとまるほど切ないってこういうことか。もう一度目を閉じて、薄い唇を待つ。



「今泉、ちょっといい…」

「教室にいるなら返事くらいして欲しいっショ…」



変わったのは私もかもしれない。殺意なんてほんの小さな出来事でも湧くんだね。