短編 | ナノ

My friend
「男って嫌い」そう呟いた。

さっきだって告白してきた男、女かよって思った。「キスしたら諦める」なんてロマンチックはほかの女性で済ませてください。

キスしたての唇が、汚いから洗ってくれとむずむずし始める。制服の袖でこすって、一時的に落ち着かせる。生まれついた時から神から寵愛を受けているのか、整った容姿に誰もが憧れるような体つき。同性からは羨ましがられ、嫉妬の念を向けられて、異性からは気持ち悪い荒い息遣いで近づいて来た。私自身を愛してくれる人なんて、この世にいないんじゃない?

パチンと誰かがいるのがわかった。ヤバイ、こんな姿見られたら後戻りなんてできない。


「表面上はいい子チャンで中身は悪女チャンか?」

「…荒北くん、今の見てた?」

「男って嫌いのところから。もしかしてレズ?」


「んなわけあるか」と反論して、私はさっさと立ち去りたい衝動に駆られた。
この男も二番煎じできたのかもしれないし、何より学校という空間が嫌だ。

話を乱雑にまとめあげることもしないで、会話の途中でも逃げようとする私に一言投げかける。


「お前、人一倍愛されたいっていう甘チャンの匂いがする」

「はあ?なにそれ」

「勘違いもいい加減にしろよ、バァカ」

「ば、っ失礼ね」


なんか、こいつムカつく。

無性に腹が立ってくる、だいたい、初対面の人にそんな態度とるなんて無作法じゃない?私なんにも悪いことしてないじゃない。眉間にしわを寄せてずかずかと荒北の目の前まで来て、右手を振りかざす前に有ろうことか荒北に止められてしまった。行動もムカつく。


「さっさと本音ぶつけられる相手見つけろヨ」


と、いうだけで何もしてこなかった。そんな言い方されると、実家の母親を思い出すじゃないか。濁った眼差しじゃない限り、それが本音なんだと私は察知した。そっと優しく私の腕を離して、置き去りにしていく。


「待ちなさいよ」というまであと数秒。