めんどくせえ。どいつもこいつもなにもかも。アタシが何したってんだ。 和光中に入って半年。最初は、生意気そうだという完全ないちゃもんをつけられ先輩に呼び出された。返り討ちにしてやったらまた呼び出されてのループ。今日も何回目か数えるのをやめた呼び出しをくらった。ボコボコにしたりされたり、喧嘩なんか強くたってなんの役にもたたねえもーうんざりだ。 「何人がかりだ恥ずかしくねーのか」 アタシを呼び出した4、5人の女子達は地面にはいつくばってアタシを睨み上げた後、ちくしょう覚えてろとお決まりの捨て台詞をはいて散らばっていった。覚えてたらキリねーよばーか。 「つえーなあ、惚れたわ」 近くにあったベンチに座って休憩してたら左横から声がして、振り向けば和光中の制服を着たリーゼント。真新しい制服からして同じ一年とみえる。 「んだてめえ、アイツラの仲間か」 「おーこわ」 ちげえよ、ただの通りすがりさ。と言いながらこっちに向かって歩いて来る。通りすがりなら何も言わず通り過ぎろようぜーな。 「チッ」 「そおカッカしなさんな」 「何隣に座ってんだ」 「まーいーじゃねえの」 何がいいんだ勝手に決めるな。あー変なやつに絡まれちまったなーめんどくせ。はーそれにしても疲れた。いってーよあんにゃろうおもいっきり殴りやがって。 「血ぃ出てる」 「さわんじゃねーよ」 口角にのびてきた手をはらいのける。しかしいつのまにのびてきてたんだコイツの腕。全然わかんなかった。今日はダメだ体力も集中力も切れてる。 「オマエさ、楽しい?」 「うっせーな」 楽しい訳ねえだろ何なんだコイツはわけわかんねえ事言ってヘラヘラしやがって。あーイライラすんなあ。 「おーい洋平ー!」 「なにやってんだんなところでよー」 仲間、か。なんだ結局コイツもさっきのやつらと同じだ。まったくどいつもこいつも卑怯だとおもわねーのか。 「ん」 んってなんだ。手の平なんか出しやがって。手の平に注意を引き付けて逆の手で殴る気か。くだらねえ。そんな手に乗るか。手の平に注意しつつコイツを睨みつける。 「行こーぜ」 「あ?」 どこにだよ。そう言ってやるとコイツは、今よりきっと楽しいぜと言って優しい瞳をして笑った。む、コイツの目ずっと見てたらダメだ。何でかわかんないけど心臓が痛い。 「フン」 「素直じゃねえなー」 目をそらすと手首を捕まれてつれていかれる。抵抗するがどんどん引っ張っていかれる。たいしてガタイがいいわけでもないのにどっからこんな力でてくんだ。 「は、はなせ、ばか」 「お?誰だその子」 「ん、拾った」 犬かアタシは。でっかい赤頭とかデブとかヒゲとか金髪がいてアタシをジロジロみて迷子か?だの拾ったんなら名前はポチ子だ!だの言ってる。なんだこの馬鹿そーな連中は。アタシはその子でも迷子でもポチ子でもねー。 「名前」 「うん?」 「名前、名前」 名前。そう復唱してコイツは、洋平という男は笑った。 「だーははははは!」 「ふぬー!待ていお前らぁ!」 そうやって出会ったのが3ヶ月くらい前のこと。それから私達はほとんど毎日一緒にいて、花道や3馬鹿が何かやらかす度に皆して笑った。未だに言葉遣いは汚いアタシだけれど、洋平はそんなアタシの大切な人だ。 「洋平」 「うん?」 「その、ありがとーな」 「なんだよ、気持ちワリーな」 はは、と笑ってごまかす。何の事かわかってるくせに。あんた気付いてたんだろ、あの時のアタシがあの毎日にうんざりしてて、本当はこんな毎日に憧れてたってこと。ねー洋平、アタシをこんなキラキラした毎日に連れてきてくれてありがと。アタシ今、楽しい。 「あの時、洋平と出会えてよかった」 「なんだ、お前あの時の事覚えてたのか!」 は?馬鹿にしてんのかつい3ヶ月くらい前の事だぞ忘れねーよ。何びっくりした顔してんだ感動的な雰囲気が台なしじゃねーか。 「で?」 でってなんだよ。たった一文字で何をさとれってんだ無理があるだろ。首を傾げて洋平をみやると、洋平はなんだよやっぱ忘れてんじゃねーかといって困ったような表情を浮かべた。だから忘れてねーってば! 「惚れたっつっただろーが。返事、まだきいてねーぜ」 長いこと待たせやがって。そう言って笑うが目だけは笑ってない洋平。あ、そーいやそんな事いってたな、忘れてた、うん。てゆーか本気だったのか。 当たり前だ キラキラした毎日を君と (で、答えは?) (わかってるくせに、ばーか) ――――――――― 洋平は自分を持ってる 人間を好きになりそう。 そしてなおかつ犬系。 個人的にその子迷子ポチ子の くだりがすき。 |