夢無し趣味無し彼氏無し、アルバイト戦隊ヒマナンジャー。暇さえあればバイトをしている私達を人はそう呼ぶらしい。失礼ね。 コンビニに始まり、居酒屋、スーパーのレジ。友達の付き添い程度にバイトを始めたけれど、バイトの数だけ出会いがある!と豪語していた彼女はとっくに辞めていた。そして出会いなんか全くない。バイトに出会いを求めるのは間違いと知って早3ヶ月。未だにズルズルとバイトしている。今月の占い恋愛運最悪だったしね、という言い訳ももうそろそろ3ヶ月目。 「アンタもしかして苗字さん?」 「へ、は、そうですけど」 「俺もあそこのコンビニでバイトしてんの」 「あ、そうなの?」 土曜日。スーパーのレジ打ちをたんたんとこなしていた私にリーゼントだけど顔の整った男の子が話し掛けてきた。そしてどうやら彼は私と同じコンビニでバイトしてるらしい。私が彼のことを知らなかったのは私と彼のシフトが真逆だったから。私も通っている湘北校の制服を着た彼の名前は水戸洋平というらしい。こんな素敵な人身近にいたならどーしてもっとはやく会わせてくれなかったの神様のいじわる。 「スーパーでもバイトしてんのな」 「うん、あと居酒屋も」 働きすぎじゃね?そう言って笑った水戸さんは、食材のいっぱい入った買い物カゴを持って去っていった。なぜか心が温かくなった。それにしてもリーゼントのお客さんなんてスーパーで初めて見たな。以外と家庭的だったりして。 「ほわああ、眠むた」 月曜日は辛い。日曜日の夜は遅くまで居酒屋のバイトが入ってるから。じゃあ入れるなよって話なんだけども居酒屋が1番時給いいんだよねとかいっちゃう私はもうすっかりアルバイト戦隊ヒマナンジャー。 「よ、」 「おお、水戸さん」 でっけえ欠伸、とか言われちゃった。なによ神様わたしが嫌いなの?朝から水戸さんに会えたのはいいとして、嫁入り前の娘さんが男の子に欠伸みられて笑われちゃうなんて赤面ものだわ。 話していくなかでわかったのだけれど、水戸さんは私と同じで一年生らしい。 「苗字さん何組?」 「10組、遠いから嫌なんだー」 「そうなの?じゃあルカワと一緒?」 「ルカワ?背が高い人?」 「そーそー、そいつが花道とさ、」 「花道?」 花道くんとは水戸さんの友達で、とても面白い生き物だそう。放課後その花道くんとやらがバスケしてるところを一緒に見に行く約束をした。 「苗字さん」 「あ、水戸さんゴメン今行く」 放課後のHRが終わってむかえにきてくれた水戸さん。いい人だなあ。一緒に体育館までいく間にへんてこりんな三人組と仲良くなった。 「ふぬ!あ!」 「だはははは!」 花道くんは水戸さんが言ってた通り面白い生き物で、天才桜木!とかフヌーおのれルカワ!とか言っては人間のようなゴリラじゃなくてゴリラのような人間に怒られていた。でもバスケに夢中で一生懸命な花道くんは何だか輝いているようにも見えた。彼のように私にも一生懸命になれるものが見つかるのかな。 ととと、やばいもう行かなくちゃ。なんてったってアルバイターは時間厳守だ。 「水戸さんありがと、私そろそろいくね」 「そうなの?じゃあ俺も行くよ」 バイト先まで送ってくれる水戸さん。優しいな。でも、誰にでも優しいのかもしんないな。あ、なんかしゅんってなった、胸が。ナニコレ。 「面白いねえ花道くん、それにあの三人組も」 「だろ?」 楽しそうに話す水戸さんをみてると、あの人達をほんとに好きなんだなって思う。あ、そういう好き、じゃなくて大切って意味だからね。水戸さんにはそういう好き、ってゆう人、いるんだろうか。ああまた胸がしゅんてなった。なんでなの?もう神様なんか嫌いよ。 「また見に行こうな!」 「うん」 「今度は二人だけで」 「うん?」 前言撤回。 「ね?」 「…うん」 水戸さんの、ね?は優しいけど何だか拒否を許さない。でもなんでなの嫌じゃないああ私今きっと顔赤いわどうしよう恥ずかしい。今までろくでもないやつだと思ってたけど、ちょっと見直したよ神様。 どういたしまして S気質の神様 (おいおい洋平本気じゃねーのよ) (忠そりゃねーな、まあ気になってるに千円) (俺はあえてただのバイト仲間に千円) (わはは、大楠そりゃあ大穴だぜ) ―――――――― 急展開すぎる駄文乙。 すいません水戸さんって 言いたかっただけなんです。 実は前から片想いしてた洋平。 賭けは忠の一人勝ち。 |