なんや、この目付きの悪いガキは。


01



土曜日。昼までやった部活からの帰宅途中の俺の目の前に突如現れた黒いランドセルを背負った目付きの悪いクソガキA。

クソガキAは一度俺を下から睨み上げた。が何も言わずにその後きょろきょろと誰かを探すように辺りを見回す。これは、このパターンはもしかすると


「おい、お前迷子か」

「だれにおまえちゅうとんじゃまいごなんかといっしょにすなや」


目付きどころか口も悪いでこいつ。典型的なクソガキAの行動をみて迷子とみた俺はクソガキAに声をかけたがそのかえしはミジンコほども可愛らしさがないものやった。しかしクソガキAの瞳は若干涙目であることは誰の目からみても明らか。


「ほなひとりでなんしとるんやクソガキ」

「…ちょっとたんけんしとったらはぐれただけじゃい」

「アホか。迷子やないかい。ほれ、交番行くぞ」


手を引いて近くの交番につれていこうとする、が、後ろの下のほうから小さな抵抗と生意気な声がする。


「ちょおまてや」

「やーさんか。はよいくで」

「こーばんいったってもええけどそれよりさきにはなやや」


なんやいったってもええて。なんやこの偉そな態度。ほんでなんで花屋や。全く知らん人間にこないな口きけるとか怒り通りこしてもうむしろすごいと思うわ。


「なにぼーっとしとん、はよつれてかんかい」


ほんで俺が連れていくんか。どあつかまー。親の顔がみてみたいわ。

結局花屋まで連れってやる。表で待っているといそいそと白い花の小さなブーケを持って出てきた嬉しそうなクソガキA。最近のガキはマセとるのー。


「なんや女にでもやんのんか」

「まあそんなとこや。おまえみたいなさえんおとこにはかんがえつかんやろけどな。」


こいつの物言いにもぼちぼち慣れてきた。もーおいてこ、ゆーて先行ったら、ま、まったらんかいと少し焦ってついて来るクソガキAは所詮小学生。クソガキAの歩幅に合わせてゆっくり交番までの道のりを歩く。


「おねえちゃん!」

「は?おねえちゃん?」


交番の近くまで来たところで急にそう叫んで交番まで走って行くクソガキA。交番前にはクソガキAの姉貴とみられる女の子がおって、クソガキAはもじもじしながらさっき買うた白い花の小さな花束をその子に渡した。なんや、姉貴に渡すんやったんかいな。

しかしこのクソガキAの姉貴かなんかしらんけど目はなすなや。ほんで口のきき方くらいちゃんと教えろや躾どーなっとんねん。

一言文句ゆうたろ思て近づくと、どっかで見たような、てゆうかほぼ毎日見とるやつやった。


「苗字やないかい」

「あれ?南くん?」


同じクラスの苗字やった。隣でクソガキAが、さっきまでの悪態を全く感じさせずに、このおにーちゃんがつれてきてくれたんよ!とにこにこ笑いながら苗字に話す。


「おにーちゃんおーきに!」


子供らしい笑顔をして俺に抱き着く苗字弟。キャラ違いすぎやろきしょくわるい。何をたくらんどんのや。ひきつった顔でクソガキAを見下ろしていると屈めというジェスチャーをされた。ほれな、何かたくらんどった。屈むと小声で


「なんでおまえみたいなけったいなやつがおねえちゃんとしりあいなんや?」


知り合いっちゅうか、付きおうとるんやけどな。


「おいおまえおねえちゃんにてぇだしたらうめたるからな、よーおぼえとけよ」


どこに?
耳元に小声で恐ろしいことを耳打ちする苗字弟。ほんまにこのクソガキが苗字の血の繋がった弟なんやろうか。

大阪と、俺と苗字の未来が危うい。