+岸本


「まあたきよった」

「お!まいど!」


野良猫やった僕が今住み着いとる商店街の中にある本屋には、度々やたらと身長がデカい二人組がきよる。口元にタラコをたずさえた岸本はんと、口数は少ないが髪型も存在もなんや気に食わん南はん。


「なにがまいどや!うっとこは立ち読み禁止や!」


このべっぴんなねえさんは僕が住み着いとる本屋の娘さんの名前ねえさん。野良猫の僕にご飯や寝床をくれた数少ない心優しい人間。なんや名前ねえさんとこの二人は『ばすけぶ』ゆうところの先輩後輩で名前ねえさんは『まねーじゃー』とかゆうもんらしい。


「何をゆうんでっか、立ち読み客も立派な客でっせ!」

「エロ本ガン見しながらえらそなこといいな岸本!」


ちなみに岸本はんが手にしているのは『巨乳祭!ボインな女の子は好きですか?』というタイトルのエロ本。こいつ見た目も中身も気色悪いのう。


「ねえさんこそ大きな声でエロ本とかいいな女の子でっしゃろ!男のロマンがいっぱい詰まった書物とゆうてください!」

「長いわい!ほんっまにもー!南も黙ってんとなんとかゆうたって!」

「俺はこんな乳牛どもより苗字先輩みてたほうが興奮しますわ」

「誰がお前のエロ好みを言えゆうたんやきしょい!」


南はんは目の前のエロ本には目もくれず名前ねえさんをずっと見ている。店に入って来た時からずっとや。僕はこの南はんがなんや気に食わん。


「南お前日常の中の身近なモンにエロをみいだすなんて並の人間にはできんぞ!お前は立派な変態や!」

「お前にだけはゆわれとーないわタラコ」

「変態とタラコ関係ないいい」

「南あんた私のことそんないやらし目えでみとったんかいな私もう人間不信なるわ!ちかよらんといて!」


名前ねえさんは僕の後ろに隠れて南はんを睨みつける。ついでに僕も睨みつけてやる。


「さては南女に罵られるんが好きな変態ドMか」

「はっ、アホゆえ俺はドSや」

「いーやー犯されるわ!もうあかんわアタシの貞操が危ういわ!ここはひとつ岸本で手打ってんか南!」

「絶対嫌」

「俺かていややけどそんな完全拒絶即答されたらなんか傷つく!」

「黙れタラコ」

「言葉の暴力というものを知っていますか!」


涙目の岸本はんはさっき食べた小魚が戻ってでて来そうな気分にさせる。僕は目をつむってネコジャラシを必死に思い浮かべて岸本はんの涙目を頭から消し去った。


「これは歪んだ愛や、せやからやっぱり南は岸本と結ばれてしまえそしてさっさいね」


そうやそうや名前ねえさんのいうとおりやさっさいね。


「俺はこんなタラコと結ばれるよりも先輩と結ばれたい」

「あれ?デジャヴュ?でもそれより先にこんなタラコというたんを謝罪していただきたい!」

「やかましい!出ていけ!」


箒ではたき出されて渋々かえるアホ二人。ふふんざまーみろ。暇やしもうちょっとこいつらを観察してみようと思う。

河川敷を歩くアホ二人は後ろからつけてる僕に全く気付いてへん。人間とはほんま呑気な生きモンやで。


「もーお前のタラコのせいでおんだされたやんーせっかく苗字先輩に会いに行ったのにー」

「人間の体にタラコなんてないで南それはきっと唇やで」

いやタラコや岸本はん。しかし南はん名前ねえさんに会いに来たとはどーゆうこっちゃ。


「はー、しかしなんで俺がこんなけアタックしとんのに気づかへんのんやろか」

「唇の下りフル無視か、てか、南、ねえさん事好きやったん?」

「おん、もうずっと前からや、一目惚れーゆうやつや」


好きやと?南はんが名前ねえさんのことを?なんや気に食わん思とったんは正解やったんやなこのヒヨコ野郎。僕はそんなん許さんで。


「ほや、さっきの結ばれたいとかゆうてたんもしかして本気でゆうとったん?」

「せや?あんだけドストレートにゆうとんのになんで先輩相手にもしてくれんねやろ」

「ドストレートやけどもなんかおかしいとおもわんか」


頭や。脳みそがおかしい。


「年下は対象外なんやろうか、ここはもう押し倒すしかないんか」

「なんでそうなった?」


あかん。こいつは名前ねえさんに会わしたらあかん危険や。




不器用な脳みそ
恋敵は野良猫ナイト








(南は黙っとったら男前やのになー)

(今度来たら引っ掻いたるからな南はん)




―――――――


またまたgdgd。
南氏純粋だけどちょっとイタい。
そして岸本の扱いが
ひどすぎる件。



不器用な脳みそ