「烈ー今日お母ちゃん町内会の集まりいかなアカンから晩御飯名前ちゃんとこで食べさしてもろてな!ほなお母ちゃんいってくるさかい!」

「またかいな」


嵐のように町内会に出かけるおかんには、いつものことながら俺の文句は聞こえていないらしい。

ひとつ年下の名前は俺ん家の近所に住んどって、名前の親とうちの親は俺らが生まれる前からの付き合いで結構仲ええから、昔から名前んとこにはよお世話になっとる。こんな事もしょっちゅうや。


「んばんわー」

「あれ烈くんいらっしゃいー!遠慮せんと食べていってね!」


晩飯食わしてもろて適当にソファに座ってくつろいでたらどこからともなく鼻歌がきこえてきた。名前や。風呂でもはいっとんか。


「なんや烈くんきとったんかいな!」

「オンチがよーきこえとったぞ」

「平成の美空へばりに何をゆうんや」

「へばりて誰やひばりさんに謝れ」


やっぱり風呂やったらしく髪の毛ベタベタでタンクトップと短パンで出てきた名前。俺が座っとるソファの下にちょこんと座りよる。昔からこいつは俺と岸本と一緒におった。妹分みたいなやつや。ほんで高校まで俺らについてきて今年豊玉に入学してきよった。

にしてもタンクトップと短パンて。いや暑いんわかるけども。兄さん露出し過ぎな気ーするわ。白おて綺麗な肌しとんな。体細すぎるやろ骨やんもっと食えよ。そんなんやから乳もないんや。身長も俺の胸くらいまでしかないちびっこやし。
ほんでまたこいつ髪の毛ちゃんとふかんし乾かさんし。幼稚園の温泉の時も小学校のプールの時も中学校んとき海行った時も髪の毛乾かさんかったなそういや。風邪ひーたらどないすんねんな。


「名前、前座りい」

「なんでよやらしーことする気いか」

「そんなことゆうとったら岸本みたいなんで。髪ちゃんとーふかなアカンやろ。さっさ座れ」


タラコにはなりたない!と文句言いながら大人し俺の前に座る。名前の首にかけてあったタオルで髪の毛をわしわしふいてやる。こいつの毛は細いからあんまがしがししたら絡まるからな。岸本と同じくらいの長さやのに、色も感じも全然違う。岸本のはうっとーしいだけのもじゃもじゃやけど、こいつの色素の薄いさらさらの髪はなんか触りとうなる。


「烈くんに髪ふいてもらうのきもちえーなー」

「あほかめんどくさい自分でふけや」

「いーやーやーふいてーや」


いやしかしこのアングルは。なかなかきわどい。タンクトップがでかいんかこいつがちいちゃいんかわからんけど、腕の隙間からブラジャーがチラ見えしよる。首筋とか鎖骨とかもう普通にエロい。こないだまで鼻垂らして俺と岸本についてまわってきとったクソガキやったのに。なんなんこんなん名前とちゃう。

例えば、もし、俺が、このまま後ろから抱きしめて首筋に舌をはわしてやったら、こいつはあの女独特の上ずった声をだすんやろうか。ん?何を考えとるんや俺は。岸本か。しかしこんなん岸本でのおても考えてしまうで。


「もーこんな格好したらアカン」

「は?なんでよ暑いやないの」

「アカンもんはアカン」




狼の尻尾
ずっと前から俺だけの女の子





(変な烈くん)
(急に女の子にならんといてくれ)



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南氏むっつりかって。



狼の尻尾