38.4℃ 電子音を鳴らして、自身の役割を果たした事を告げる体温計には先ほどの三つの数字が表示されていた。寒い寒い寒い。毛布を被せた羽毛布団に包まっているというのに、体の芯から沸き上がる寒気が薄れる事はなく。このまま一人ぼっちで死んでしまうのかもと思うと急に淋しくなって涙がでてきた。嫌やまだ死にとうない。 「名前どなしたん、しんどいんか?」 烈や。あれ、学校どないしたんやろ。今何時やっけ。もう部活終わったんやろか。ききたい事はぎょうさんあるけども、頭ぼんぼんしいよるし喉痛おて声出えへん。でも、烈が頭撫でてくれるから、なんかホッとした。 「…ん」 安心して一眠りしてもうたんやろか。浅い眠りから覚めた時には誰もおらんかった。あれは夢だったんか、烈がアタシん部屋に来てくれて、頭撫でてくれたんは。ベッドから少し身を乗り出して部屋を見渡すけど、アタシの部屋には相変わらずアタシ一人。あかん。さっきよりももっと淋しなった。こんなことなら烈がきてくれる夢なんかみんかったらよかったわ。あほ烈、勝手に夢にまで出てくんなや。ぼけー。 「また泣いとる」 「ひぐっ…?」 あれあれ、また夢でもみとんかいな。でもほっぺに伝わる冷たさがやけにリアルや。涙を拭う指の感触も、まるで本物みたい。自分の目をイマイチ信じれんかったから、ほんまに烈?と訪ねたら、内科の前に眼科行くか?てちょっとだけ怒られた。よかった、ほんまもんや。 「さっきもお前泣いとったな」 泣くほどしんどいんやったらなんで俺にゆわんのん。そう言いながらふにゃふにゃになった氷枕を新しいのに変えてくれた。じんわり冷たいんが気持ちいい。烈が持ってきてくれたお粥食べて、風邪薬飲んで横になってたら烈がちゃんと前髪よけてオデコに冷えピタ張ってくれた。んん、ひやこい。 「つ、よ」 「ん?」 「手ー…握っとって」 おん、といってすぐに手をつないでくれる。ありがとうと言えば気色悪いと毒づかれたけれど、烈の手は無条件に優しくて、おっきくて、あったかかった。今度は黙っておらんならんとってよね。 なあ烈、そばに、おってね。 「…おったるさかい、はよ治しいや」 びっくりした。一瞬声に出してしもうてたんかと思うた。でも確かに何も口走ってはいなくて、目を見開いて烈を見てたら、はよ寝え、ゆわれて、繋いでないほうの手で頬を包まれて親指で瞼を撫でられた。ただそれだけの事やのに、やっぱり絶対的な安心がアタシを包むから。ほら、もう、瞼が重くなってきた。 落ちてゆく、意識のなかで ただ、君の温度を感じてた (名前ちゃん完全復活ー!) (そらあよかっ…けほっ) (…え?) (けほん、けほっ) ――――――――――― 風邪をうつされた南氏が 夢主に無理矢理看病されて 逆に理性吹っ飛びかけたり しちゃったらいいのに。 彼は発熱した夢主にも 理性吹っ飛びかけてそう。 えすさまー はやくよくなりますように。 落ちてゆく意識のなかで |