契れた、千切れた、ちぎれ、た?

久しぶりに会った途端にいきなりバトルかよ、えっ、お前なんか怒ってんの?って叫びたいくらい一方的なバトルだった。
「ぉ、…ま、っ!」地面を重く揺るがして、俺の最後の手持ちが倒れた。
恩返し、と指示する前に電光石火に十万ボルト食らった、哀れな俺のピジョットをボールに仕舞う。まじごめん、帰ったらめちゃくちゃ可愛がってやろう、お前昔からあのピカチュウ苦手だったもんなあ…。

「………強く、なったね」
溜めて溜めて、考えて思考して、躊躇った言い方でレッドは言った。
「…いーよ、無理すんなよ」
別に強くなったとは思っちゃねえよ、もしかしたら無鉄砲だった昔の方が強かったかも知れない。捨てるのを怖がる俺は、弱くなった。
「お前は…強く、なったなあ」
「俺は強くなんか無い。」
凛、とした譲れない言葉で、否定して、断定した。
帽子の鍔を下げて、レッドはまだまだ自分は未熟だと呟く、熱い何かが耳の後ろに沸き上がる。
「未熟じゃねえよ、なんだよ、何処かだよ」
苛立ちを隠さずに含み、荒い口調で俺は言う。お前は何時でもそうだよ、一人で考えて一人で決めて一人で行動すんだろ。
「ヒビキ、に教えて貰った」
なにを、疑問は届かず風に欠き消された。レッドはもう喋る気は無いらしく背を向け、歩き出した。
「この、っ…待てよ!」
「約束は、」
まだ、約束は無効じゃない。
そう呟く、俺は驚いて言葉を失う。
幼き頃にした、小さく小さな約束。
それに確かに永遠を、契ったのだ。

忘れるものか。

千切れかけた指先

「ずっと、何があっても俺達はライバルだからな!」
(忘れるな、忘れてないよ、なら。)

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