お互いのぼこしあい殴りあい、暴力表現ありまくりです。

反発しあうこの心を、どうして好きになれようか。

背後から飛んできたそれ、を腕を捻ってキューで叩き落とす、足元に転がる壊れたボールを踏み潰した。振り替えった勢いのままキューを突き付ける、だがそれは呆気なくばしりと掴まれた。引っ張られる前に手放して間合いを取って睨み付ける、キューは半分にへし折られて遠くに投げられた。
「ち、」
「…なーんだ、こんなもん?」
舌打ちをして拳を握った、近付けば体格差で不利になる、キューを手放したのは惜しい。ズボンの後ろのポケットに忍んだ空のボールを取り出す、そんな一連の作業を見ながら、目の前の男は微笑んだ。
…余裕綽々かよ、腹立つ。
ひとつ、顔に投げつけて相手の死角になるように俺は横に滑る。難なく避けられたのを確認してふたつめを力一杯、額辺りを目掛け投げた。避けずに腕で庇うのを捉えて、「は、っ」すかさず投げたみっつめが右脛にクリーンヒット。ぐらりと体勢が微かに崩れる。見逃さずに地面を蹴り上げて、両足でドロップキック、を、っ!?



形容しがたい、したくない、鈍く、痛々しく、骨が震えるような音が、内側から、響いた。

「―――っあ、ぐうぅ…!」
ちかちかと視界が白黒に瞬く、回りの音が全て途切れて息が詰まる。悲鳴と共に吐き出した二酸化炭素は、苦痛に満ちていた。ぐらぐらと頭の中が安定しない、嫌な不快感、呼吸をする度に抉れるように痛む頭部。じわりと涙が浮かぶ、状況が分からない、熱い、痛い、苦しい。
「あめーよ、ばっかゴー。」
がつりと頬に衝撃、口の中で歯がかちかちと揺れる。殴られた拍子に洩れた小さな悲鳴に、馬乗りになった男は渇いた声を上げて、笑う。息を吸う前に反対の頬も殴られた、ぼやけて歪んだ景色に映る、異様な赤を睨み付けた。
「…なーに、まだ抵抗すんの?」
前髪を捕まれ痛む頭部を持ち上げられる、じくじくと膿むみたいだ、痛覚が無ければ良かったのに、な。
「……まじ、くたば、れ。」
先程のキックはお見通しだったんだろう、避けられた挙げ句にそのまま服を掴まれて頭から地面に叩き付けられたらしい。まじ、やられた。
「…ほんっと、おまえ、むかつくなー…」
別にあんたに好かれようだなんて思ってませんから、握り締めた砂を目にかけてやった。驚いて力が緩んだ瞬間に肩を押し退け、下から抜け出した。目元を抑え、踞るその背中を目一杯蹴った。
「てっ、め…!」
地面に置いた鞄を拾い上げて、折り畳み式のスケボーを取り出す。
「俺、多分世界で一番嫌いなのあんたですよ、」
「…奇遇だな、俺もだよ、今のゴーが、世界で一番嫌い。」

舌打ちをひとつした。相容れることは出来ない、お互いが反発しあうばかりで、産まれる感情は嫌悪ばかりだ。

「はやく、くたばれよ。」嫌悪を余すことなく表した捨て台詞を吐き捨てた、余った空のボールを宙に投げて、地面を蹴った。背後から飄々とした、俺の大嫌いな声。
「お前が先にくたばったらな、くたばってやってもいいよ。」

くたばれバイオレンス

残念、そんなの当たり前にお断りだ。

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