あの日、俺は綺麗なものを、見つけたんだ。
「レッドさん、見て、ほら綺麗!」
繋がった手を引っ張りながら、砕いた欠片を散りばめた宝石のような夜空をゴールドは指差す。
「…うん、綺麗だね」
きらきらきらきら、輝くそれらを掴もうと指先を宙へ伸ばすゴールドの手を掴んだ。
「綺麗だよ、ゴールドも」
恥ずかしくなるような甘い台詞を述べてその小さな手の甲へひとつ口付けを落とした。
きらきら光る宝石は、いまこの手のなかに。



(初代赤と金。)




あの日、何で俺は突き放したのかな。
雪に埋もれるこいつを見下ろしながら、俺は握っていた赤い花束をそっと添えた。
さようなら、と確かにあの日、呟いた気がするんだ。こいつが何を思って感じて考えていたかなんて俺には分からない。
分かり合おう、としたなら何か変わったのかな。
なんて淡い幻想、この雪のように儚く溶けていく。
冷えきった四肢から力が抜けた、膝を付いて倒れ込もうとした俺の肩を誰かが掴む。
「駄目です、ファイアさん」
死ぬな、生きろ。
肩から伝わる、確かな熱さに泣きたくなった、大声を上げて埋まり逝くこいつを抱き締めて泣き叫びたかった。
震える俺を後ろから抱き締めてゴールドは帰りましょう、と俺の背中を吐息で擽りながら優しく囁いた。
赤い花弁が散る、俺の涙と嗚咽はゴールドに包まれ、静かに溶けていった。
あの日、俺が失ったものをお前は広い集めて与えてくれるの?



(炎と金。)




あの日あの日あの日、あの日の俺を覚えてる?
「ヒービキッ」
無防備な背中に体当たりした、そのまま絡まりながら二人で硬い地面に倒れた。
「…ファイア、さん…」
「ごめんご?」
深い溜め息が下から聞こえた、呻くヒビキの上から退いて土を払う。立ち上がったヒビキは顎を抑えていた。
「ん、ぶっけた?」
「…おかげさまで」
微かに赤くなった顎に指先で触れた、労るように擦れば擽ったいのかヒビキは吹き出した。
「っ、やめて下さいよ、くすぐったいー!」
「あははごめんごめん。」
頬を染めて涙目で見上げてくるヒビキにぐらりとしたことは内緒、俺はヒビキが好きだ、恋愛対象として大好きだ。
「ヒビキを愛してる」
「えっ」
ぽろっと溢れ落ちた、本音。
慌てて口を覆うが意味無い。熟しすぎたトマトのように真っ赤になったヒビキに、同じように真っ赤になった俺は正面から体当たりした。
「ごっ、ごめんごー!」
意味が分からない捨て台詞を叫んで、俺は身を翻して逃げ出した。
情けなくてちょっぴり泣いた。
数日後にヒビキと両想いになった、恋人としての一言。
あのあのあの、あの日のことは、忘れて欲しい。



(炎と響。)


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