君はそれでいいのかい、優しく問いかけたあの人の影が過る、躊躇わずに記憶から打ち砕いた。

たりめーだ、後悔するくらいならあの夜、赤い瞳を綺麗だと思わなかっただろうよ。
口内を蹂躙する舌を思いっきり噛んでやった、がりりと嫌な音がして微妙な鉄の味が広がった。
「…ゴー、酷い」
「……人が、耳鳴りで、苦しんでるなか、ちゅっちゅっしてんじゃねーよ!」
「ゴーの苦しさを間ぎらわそうとした結果!」
「逆に苦しかったわ!」
一瞬記憶に過ったマツバさんが走馬灯かと思った、あの人出る時点で冗談じゃない。
違和感と騒がしさが漸く消えた、耳鳴りも収まってきたようだ。頭を降って耳に残る残響を振り落とす、服やリボンがじんわりとした汗で張り付いて気持ち悪い。
「なんすかあれ」
「異形な存在、多分俺が引き寄せちゃったんだよ」
声は明るいが、何処か素っ気ない。そういえば前に言っていた気がする、半妖や人間ながら稀な力を持った奴はそういうのを引き寄せやすい、って。だからイエローは狙われやすいし、レッド先輩も今見たいな奴等を呼んじゃったのか。
「はーん、じゃあもうあいつら行ったし、行きましょうか。」
「…ゴー、」
「それ以上言ったらぶん殴りますからね。」
そもそも何故俺達はこんな危険を犯してまで、獣道に行こうとしてるのか。丁度いいから振り返ろうか、至極下らなく、とても大事な事だから。
「先輩は半妖です、はいリピートアフタミー?」
「…うん。俺、半妖」
「俺人間です、ユーアオーケイ?」
「無理に英語使おうとすんな」
「半妖のレッド先輩は寿命が短い。」
そう、ざっと見積もって後三年。妖怪の血は流れてても、人間の血が濃すぎた。身体の中の機能や血液、体内の全てが反発しあった結果、長くは生きれないと分かった。
「治す方法は、獣道を一週して戻ってくるだけ。あら簡単、レッド先輩行きましょう。」
獣道、は異空間だ。境界を一度越えたら人は人で入られなくなるらしい。つまりは俺達は、「妖怪になる、」レッド先輩が震えた声で呟いた。
「半妖なレッド先輩は妖怪に、人間の俺も妖怪に。それで」
「死んだら嫌だよ、ゴー」
「…あんたは死ぬこと前提っすか馬鹿レッド先輩」
「俺の分まで生きてとか言いたい」
「よしじゃあ言わせない。…あー、えーと、んー…」
あーよし、いいな、一度しか言わないぞ。うわあ俺が乙女チック!はっず!なので心して聞くように。

「俺と一生生きやがればかやろう言わせんなくたばれこのやろう。」

目隠しで見えないけどあの綺麗な赤いが見開かれてんだろうな、と思ったら勿体無いなあとちょっと思った。
俺さ実は助けられたあの夜に、赤い瞳に惚れたんだ。死んでもいや当分死なないか、じゃあいつか言うかもだけどそれはまだまだ遠い未来前提だからとりあえずそれまで俺と生きろよ。
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