「…確かな恋情とか言ってみてーわ。」
はあ、溜め息を吐いて誰も居ない椅子を見やる。皿とカップ、それらを端に寄せて未だ手付けずな色とりどりなケーキを並べた。女性店員が三つの紅茶を持ってきて、机に置いた。俺と彼で食べ尽くした何枚もの皿と空のカップを片付け、去っていく。…会計してさらには紅茶も頼んだのかあの人、俺が女だったら遠慮無く惚れてるわ。
「パール、」
「…よーう二人とも、おっせえよ、これは罰金もんだぞ?」
「用事が長引いたもので。」
「あれ、ゴールドさんは?さっき居たよね?」
「良く見えたな…ゴールドさんは帰ったよ」
赤い液体が飛び散った、苺が無いケーキを口に突っ込んだ。
「何話したの?」
「覚えてね…ああデートの時にはミルフィーユは駄目なんだってよ」
会話何て記憶に残る筈が無い、甘ったるい恋情がぼろぼろに崩され、呑み込まれただけだ。せいぜい記憶に残ったのはしょうもない豆知識と、初恋は叶わないと言う体験談だけだ。
「ふーん…それにしても凄い量のケーキだね」
「十二個…四個ずつ食べれますね」
「あー俺無理胸焼け半端無いわ、ダイヤ食っていーぞ」
「やった!」
「良かったですねダイヤ、けど私の分まで食べないで下さいね?」
信頼、友情、俺はこいつらにそのどちらも無償でやることが出来る。それでも愛情はやれない、ゴールドさんはそれが出来る人で、だからあの人に俺は惹かれた。
例えば俺が女だったら、なんてそれこそくそ甘ったるい幻想で妄言、今更生まれ落ちて決められた性別は変えられはしないのだ。
それにあの人は性別なんて気にしないで愛を与え、注いでるじゃないか、まあつまりは、愛情を欲しがる子供、みたいな。…俺ださい、あの人は俺を待ってはくれないのに。
置いていかれるのが嫌なら、割り切るしか無いんだよ、なあ俺。

ケーキを嬉しそうに頬張る親友達を見ながら、湯気が立ち上る紅茶に口を付けた。そうして俺の拙く、仄かに淡い恋情を静かに流し込んだ。


そうやって 見送ってきたのですか

(数多多くの誰かに別れを紡ぐあなたはそして また ひとり)


「パール、お前は俺を置いていけ、それは恋情じゃない。単なるどろどろした甘ったるい、堕落だよ。」

Title/選択式御題様
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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