「す、」


「き、だ」


溢れた、こぼれた零れた溢れた、俺の抑制心は何処かへ蹴っ飛ばされたらしくたった一言、たった三文字の言葉がたくさんの鮮やかな感情をふんだんにぎゅうぎゅうに詰めて、愛しさと恋しいって感情を含んで孕んで、唇から、落ちていったんだ。
破裂した内心は空っぽだった、ただ言ってしまったというやるせない後悔が一瞬胸を掠めた。ずっと秘めてた俺の中のパーツが一欠片外れて、空虚、虚しい、ばらばらとパーツが欠けていきそうだ、空しい屑の塊が、感情が、溜まって容量オーバー、キャパシティの限界、崩壊しそうだ。



ぼたぼたぼたり、

俯いた視界か滲んで水滴が大量に落ちていった、もう言葉以外に落とせるものなど無いのだと、思っていたが、まだ、残されていたらしい。まだ損失を、喪失を惜しむ心臓が、一人残されて、嗚咽を上げている。


「幸せ、になりたい、」
「幸せになりたい、」
「お、まえと、幸せに、なりたい」


「――…うん、うん、そうか、そうかあ…」
「恋愛感情なんだ、すきなんだ、」
「うん」
「ずっと、隠そう、と思ってたんだ」
「うん」

「、すきだ」
「うん、俺も」



ぼたりと大粒の滴が不意に伸ばされた風丸の手にこぼれた、ぱたたっ、と瞬きをしたら数滴落ちた、暖かい手の甲が俺の目元を撫でて涙を拭った。呼吸をするのを忘れた、滲んだ視界のまま顔を上げた。

「うん、俺も、お前と幸せになりたいよ」


ぐちゃぐちゃな俺の顔を見て、確かにさっき作った折り紙と俺がそっくりだと風丸が笑った。頑張った結果の、思いが籠った素敵な折り紙だと笑った、幸せそうに笑った。


俺も、幸せだと思った。


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テーマ「人外ファンタジー」
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