お互いに相手の家に泊まることが多い俺達は、お互いのタンスの一角に相手の服のスペースがある、俺は最低限にと思い、とりあえず二着分、冬になると厚手のジャンパーもプラスされるが。
しかし俺の部屋のタンス、一番下のスペースはもはや円堂専用となっている、毎回持ち帰れと言うのだが聞きやしない。もう半分諦めている。

なので急なお泊まりにも衣服などの心配は無い、ちなみに歯ブラシとコップ、バスタオルなどもお互いの家に専用として置かれている、慣れって凄い。


美味しいご飯を頂いて風呂をお借りしている間にさて、円堂は何処までプリントを埋めただろうか。ご飯前に一応数学は終わらしたがあまり期待はしない。

ぺたりぺたりと階段を上がって湿った髪を揺らす、普段結い上げている髪を今は垂らしているが、不意にそういえば伸びたなあ、髪をと一房掬った。
指先がしとりと濡れた感触に、そろそろ切ろうかなと頭の端で思う、円堂ぐらいばっさり切ってしまおうか、それでも別に自分としては拘りは無いのでいい。


「えーんどーう」

軽いノック、帰ってこない返事に嘆息、睡魔に負けて寝たに俺は二百円かけてもいい、絶対寝たに、小遣い全額かけてもいい、あいつ絶対寝ただろ。

「……ほうら、やっぱりな」

静かに扉を開けて、見えた光景に口元が引き吊った。机に顔を突っ伏して、プリントに方頬をぺたりと張り付かせながら暢気に眠る顔をはっ叩きたくなった。お前は、ほんっ、とに予想を裏切らない奴だよ。

円堂の側に腰を下ろして睡魔に緩む顔を除き込んだ、ぱたりと俺の髪の毛が動きに釣られて揺れて円堂の頬を軽く叩いた。だが一切起きる様子は無く、くそう、幸せそうな顔で眠りやがって、ご丁寧にバンダナも首まで下げて寝る体制だしな。
頬をつねってやろうか、そう思い、手を伸ばしてそっと緩んだ頬に指先を当てた。


ぱち、

「う、おッ起きた」

「……、風丸」


寝起きだからか、随分と低く掠れた声が俺の名前を呼んだ、それは、噛み締めるように、一文字一文字、色を乗せられたように重く、艶やかな音で溢されたから、一瞬思考が固まった。

驚いた心臓がどどど、と高まるように跳ねて思考だけではなく行動も固まり、ぱちりぱちりと円堂が瞬きしなければ時が止まったのかと錯覚しそうだと思った。


とろりと潤んで蕩けた眼がゆるゆると時間をたっぷりとかけて、俺の顔と自らの頬に触れる指先をじっとりと見詰めた。

やがて、何故か満足そうに、目を細めて、唇の端を少しだけ持ち上げて、柔らかく笑った。
凄く、嬉しそうに、黄土色の瞳に俺を滲ませて、幸せそうに、笑った、んだ。

そうしてまた閉じられた眼が一泊の間を置いて、ばちりと勢い良く開かれた。


「、は?」
「え、お、おはよ」

「……は、…えっ?」

ひゅっ、と吸い込まれた酸素が乾いた音を立てて、「ウワアアアア風丸ウワアアアア!!??」次の瞬間、破裂したように大きな叫び声が響いた、連鎖したように俺も、「ウワアアアア円堂ォオオ!!?」声を上げてしまった。

円堂のお母さんに怒られた、当たり前だと思った、アホだと思った、お互い。

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