競争の結果は俺の勝ち、男としての威厳、維持成功である。円堂は悔しそうにしながらも切り替えは早く、俺を家へ上げて乱雑に物が押し込まれた鞄から端がぐしゃぐしゃのプリントを引っ張り出した、数学だった。
円堂がポイッとベッドに投げ捨てた鞄を拾い上げて、プリントの進み具合を見ながら傍らで鞄の中身を整理してやった。っていうか昨日貸した国語の教科書を回収するついでである、何故か教科書同士の隙間から大量の折り紙が出てきて、カラフルな数十枚の色紙に溜め息を吐くしか無かった。
そして真っ白な国語のプリントもさらに発見してしまい、項垂れて頭を抱えた。国語の教科書もう少し貸してやろう。


「ウウウ」
「……おい、俺、飯前に帰る予定だったんだが新たに発見した真っ白な国語のプリントに一問しか解けてないこの数学のプリントは全く何でしょうか円堂さんこのやろう」
「風丸先生が泊まっていってくれればいいと僕は思います」
「うわやめろよまたかよこのパターン!」
「先生俺を見捨てないで!!やめて!!俺を捨てないで風丸!!一郎太さん私を捨てるのね!浮気者!」
「なにおまえ!きしょくわりー!やめろ誤解を招く!」

シャーペンを放り捨て、隣に座っていた俺の腰にガッシリとしがみついた円堂を剥がそうと身体を捻るが腕の力が強まるばかりで、やばい徐々に苦しくなってきた。

「わ、わかっ、」
「一郎太ちゃーん、今日泊まっていくかしら?」

風通しを考慮して開いたままの部屋の扉から円堂のお母さんが顔を覗かせた、聞かれた問いに少々戸惑いながらも頷けばにっこりとおばさんが笑った。

「良かったわ!もう今さっき一郎太ちゃん預かりますって電話しちゃったんだけどそういえば聞いてなかったわと思って」
「え」
「ごめんねえ、凄い自然な流れで話が進んで、守をお願い、その代わり今日のご飯は腕を奮うわよ!」
「あ、いえ、こちらこそ、お邪魔します」

腰に抱き着くのを止めてによによと笑いながら俺の肩を叩く円堂に、とりあえずアッパーを食らわして、やりきれない気持ちを発散した。踞り、唸る円堂と真っ白な二枚のプリントを睨んで、やはり、深い深い溜め息をまた吐くしか出来なかった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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