「あ、!……いうえお」
「なんだいまの」
「やばい風丸めっちゃやばいぜドドド!」
「効果音でやばさを無理矢理表現したな、なんだ」
「明日、提出の、プリント、やってない」
「お疲れさまでしたー」
「いやいやいや見放すなよ!!やめろよそういうの泣くぞ!」
「ガラガラピッシャァン」
「えっなんの音?それなんの音?」
「風丸先生の授業終了の音」
「始まってすらいないだろ!?」
「近い近いうるさい」

徐々に近くなる距離と声に苦笑しつつも片手で円堂の肩を押して距離を保つ、ぶうと不貞腐れた表情はすがるように俺を必死に見詰める、苦笑いが深く口許に彩られた。

頼られることは嫌いじゃないし、なによりも腐れ縁のこいつに頼まれごとをされるのはしょっちゅうで、いやこれはほんとにサッカー部の助っ人とか含め、細々した日常のお願いに繋がりまあ、しょっちゅう。しかし結局、甘い俺は仕方ないなあと笑って手を差し伸べてしまうのだ。
だから今回も毎度毎度同じパターンで。ふう、と溜め息をひとつ吐いて目尻を下げた。それだけで目の前で不貞腐れていた幼馴染みには了承の合図だと、解ってしまうのだから、全く仕方無い奴だ。

「かぜまるうおお!まじお前すきだ結婚しよう」
「だが断る、それ豪炎寺にもさっき言ってたろ」
「ばれたか」
「っていうかお前みたいな嫁は絶対に要らん」
「えっ」
「えっ、だって幼馴染みでこんな関係でさらに結婚したら絶対大変じゃんか」
「えっいやいや俺が旦那じゃねーの」
「えっいやいや」
「えっいえいえ」
「…いやいや」
「……いえいえ」

ぴたりとお互いの足は歩を進めるのを止めて、じとりとした視線を絡めた。維持と意地の張り合いである、俺は旦那を推奨して今現在の立場的にも維持したい、円堂も同じく、そうして意地の張り合いはやがて賭け事に変化するのも、昔と変わらない俺らの癖だ。


「、よーいどんッ!!」
「っ、え、円堂!ずるいぞ!」
「だって風丸はえーもんハンデハンデ!半田!」
「なに言ってるんだそんなの関係ないぞ!あとなんで半田出したしお前」
「ゴールは俺んちなー!」

通い慣れた道を通り抜けてばたばたと走る、なにひとつ昔から変わらないと二人で笑う。滲んだ夕日が柔らかく背中を押すからスピードを上げた。

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