「忘れていただろう」
「いえ、あのですね」
「忘れていただろう」
「いやあの、グリーンさんあの」
「忘れていただろう」
「う、っ」
「忘れてた、だろう」
「ごめんなさいごめんなさい!」

はあああ、と身体中の酸素を吐き出したんじゃないかってくらい重い重い溜め息が形の良い唇から零れて、もうぼくには口内の水分が例え干からびても延々と謝罪を繰り返すことしか道は残されてなかった。

「違うんです違うんですほんと違うんです違うんです…ううう…」
「普通に忘れていたんだろうおまえ」
「う」
「レッドの誕生日は一週間前くらいから俺に何が良いかとか渡すタイミングとか毎日聞きに来たくせにな」
「うっ」
「一応、恋仲であると思っていたんだがどうやら俺の勘違いだったようだ」
「うわあああ違うんです違うんですグリーンさああん!!!」

お腹の底から絞り出した悲鳴は本当に我ながら必死で、思わず腕を掴んで否定を叫ぶ。恋仲ですねぼくたち恋仲ですねごめんなさいほんとごめんなさい昨日すごく眠かったんです日付感覚無かったんですほんとなんですだからそんな叱られたガーディみたいな目で明日の方向を見ないで下さい!!

「ああああのあのグリーンさんグリーンさん!!」
「うるさい、なんだ」
「来年は再来年はっていうか一生もう忘れないので!!ずっとずっと祝い続けるんで!!毎年ちゃんと祝うので許して下さい…っ!!」
「、」

ぴたりと、グリーンさんの行動全てが制止して、見開かれた目が信じられないものを見たような色を滲ませて、揺れた。澄んだ若葉の瞳がそうして、静かに細められて、欲しかった玩具を漸く与えられた子供のように、嬉しそうに柔らかく微笑んだ。

次はぼくが驚く番で、無邪気なその笑顔がとても綺麗だったので直視出来ずに視線を逸らした。ぼくの両手をつい、と掬って左手の甲に唇を寄せたグリーンさんが満足そうに言葉を落とす。

「もういい、」

ぼくはただ心臓が張り裂けそうなくらい、どきどきしていた、グリーンさんの一連の行動が神聖な儀式に思えて、顔が熱い。思考が正常に働いてくれない、どきどきが、身体中で叫んでいて、うるさい。心臓ちょっとうるさいうるさい。

「ぼくは、まだ貴方になにも、あげて、ない」
「もういい」
「あきれて、しまいましたか、?」
「違う、もう」



1123/予約済み。
(1122 Happy Birthday)
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