まず、僕の後ろ手には鋭いナイフが用意されています。


「僕のことは嫌いになられても構いません」
我ながら胡散臭い笑みを顔に貼り付けたものだ、ほら彼も顔を歪めて怪訝そうに怪しんでるし。
「えー俺あんまお前の事嫌いじゃねーけど」
「好きでもないでしょう?」
「まあなー、どっちかってーと好きに分類されるけど」
素直だなあ、下から見上げるようにじろじろと不躾にゴールドさんの顔を見詰めた。何だか居心地が悪そうに視線を左右上下に揺らして、困った挙げ句だろう、ぐいっと身体を強く押されて物理的な距離を取らされた。
「よし。まあ待て、もっと心のシンパシーとやらを読み取ってだな、距離感を保とうぜお前近い」
「気のせいじゃないんですか?」
「いーや、大変ちーけえな!近すぎねーか!どっからどう見ても可笑しいだろ!」
ベッドに並んで座る僕達の押し問答、ぐいぐい、ぐいぐいとお互いの力が数分間、拮抗状態。結局、幼少頃から色々鍛えられた僕には勝てず、柔らかなベッドにゴールドさんは押し倒された。
「オイオイオイ、オイコラそこ退けおしゃれ小僧」
「いやーちょっと無理ですねー」
「無理じゃねーよ!さっさと退けあほんだら!」
「煩いですよ、大人しくして下さい」
両手で彼の口を塞ぐ、ゴールドさんが苦しそうに僕の手を引っ掻く、地味にちょっと痛い。
「先程言った通り、僕のことは嫌いになられて構いません」
「もが」
十分嫌いになったわ!金の瞳が憤りを込めて僕を睨む、それを薄く笑って言葉を続ける。
「例えばですけど、僕は実際の所、恋愛感情でゴールドさんのこと好いてます」
ああ、例えじゃないな。そう呟けば驚いたように目が見開かれる、気持ち悪いとか思われてたりして、まあ予想内だ。
「それで貴方に良い返事を貰った場合、熱愛的なキスがゴールドさんにプレゼントされます」
「うぎぎぎ」
すげえいらねープレゼントじゃねえか、言いたいことは何と無く察するが軽やかにスルー。聞いて貰いたいのはここからだ。
「それで断られた場合ですが」
「んが?」

「僕は隠し持ったナイフを貴方に突き立てるでしょう」


「さて、このふたつの例え話を頭によーく刻んだ上での、貴方に質問です」


「僕と付き合って頂けますか」


∴君は正直、

ナイフなんて何処にも無かった、ただの脅迫的な告白でした。
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