そう。



「ゴールドは、すげえ綺麗だったんだって」
表示された名前の彼を脳裏に浮かべる、なるほど、綺麗、ねえ?一言で表現するには些かアバウトで曖昧、内心でそう評価して自分の整った爪先を何と無く見詰めた。
「綺麗なものはお前も好きだろ、ルビー」
ええ、汚く醜くおぞましい、そんな理解し難いものに比べれば、断然、僕も大好きですよ。ただ、今お話した通り、理解し難いのですよ、貴方の言葉は。言語を理解出来ても意味自体には首を傾げるばかりです。むしろ理解したくないかもしれません。
「綺麗なものはそのまま綺麗にしときたい?」
「僕はそう、思いますけど」
貴方はきっと違うんでしょうね。前髪の隙間から細められた赤い目が、話さずとも物語る、欲しがる気持ちは分かりますけど。
「僕なら、手元で大事に愛でます」
「俺だってそうだよ、奪ったら、離さないし、逃がさない」
それで一生、愛でるよ。
ここの会話のポイントは、お互いに手元に得た、と言う前提で話が進んだ所だろうか。ただし、返された彼の発言には酷く、重い感情が付属して添付する。
「なるほど。貴方の愛で方は大変、複雑な形をしているようで」
ただ単に、歪んでいると、一蹴してやりたいが、仮にも先輩だ、ぼかして相槌をうった。
「だって、欲しいから仕方ないじゃん?」
へらりと笑って足元の花を踏み付ける、両手を上着のポケットに突っ込んで無邪気そうに笑い声をあげた。
諦めるだなんて、そんな妥協の選択肢、彼には存在していない。
欲しいなら奪え、綺麗なものだから欲しかった、仕方ないだろ?彼が言ったそれらの単語を組み換えて、分かりやすくするとこんなものだろうか、なんという。

自己中心的な幼子の思考。
明日にでも世界は俺が中心で廻るとでも言ってくれたらとても面白いのだが、多分この人は笑顔で普通に言える気がした。彼の世界は誰かを絡めて取り込んでも、けして歪みを止めず、曲がり回り続ける。冒頭に一回だけ名前を出された、綺麗な被害者に同情しとく。第三者で良かった。
「せめて。」
最初に説明したであろう、僕にとっての汚く醜くおぞましい、そんな理解し難い物体。その例え、けれどひとつしか無い、残念な答えを上げよう。
目の前の彼が見事に一致するんだよねえ。

まあそんなの第三者の僕には関係無いことだ。
まあまあ、まあ、話を切り捨てるためにね、一言で閉めようか。

汚い彼と綺麗な彼がどうなろうと、それすら僕に関係無いことなのだし。
そう。

「せめて、汚さないで下さいね」

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テーマ「人外ファンタジー」
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