君が彼に対する態度は称賛出来るほどさ、乾いた手のひらでぱちぱちと渇いた音を鳴らす。
それは褒めてない、目線で不満を訴えればくすりと子供らしかぬ大人びた笑い方で僕を指差した。
君のそれは恋慕なわけ、疑問を舌打ちで弾く、苛立ちを表した一回の舌打ちだけでは相殺出来ずに何度も何度も、答えを求める声が僕を攻め立てる。

君は彼の事が好きなの?
好きだったらなんだってんだよ、指されたままの柔らかな切っ先が無性に不愉快でその手で叩いた。痛がる素振りすら見せずに肩を竦めて綺麗な笑みを浮かべた、彼を彷彿とさせるような笑顔に唇を噛み締める。

ああ、きもちわるい。

その好きは恋慕?問われたそれに無言を返した、お前に教える義理なんてないしお前は彼じゃない、同じ声で似た笑顔で、他人のように彼を語るな。憤りは形となって現れる、肩を掴んで床に押し倒す。背中を強かに打ち付けても顔色を一切変えないこいつにさらに、腹が立った。
僕を痛め付けるつもりなのかな、ルビーくん。うるさい、俺の名前を呼ぶな。今さら失ったものに、喪ってしまったものにどうこうしようだなんて馬鹿がすることだよ?抉り返したのもお前で、彼の喪失も、お前のせいだろ。
体内に響き合うような糾弾、ねとりと絡み合うような視線は殺意を含む。全てを呑み込むような深い群青色が、僕は大嫌いになった。
返せよ、あの金色を、返せよ。

細い首に指で触れた、爪をゆっくりと食い込ませて、そのまま力を込めてしまえば、群青色は消え去る。
群青色なんて、必要無い。
「…お前が、」

「ルビーが幸せになれるなら、いいよ」
にへら、と歯を見せて呑気に笑う、その顔が、彼にしか見えなかった。指先の力が抜ける、それでもこの色は輝くようなあの激しく優しい色では無い。

じわりと浮かんで溢れて零れた液体が僕の瞳のように紅であれば良かった。そしたら彼のために僕は泣けずにいれたのに、けれど透明だったからさらに僕を惨めにさせたのだ。

君はもういない。

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僕があの金色を見ることは一生有り得ない話だった。
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テーマ「人外ファンタジー」
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