吐き気の廃棄場所。 | ナノ



「踏んで」
レッド先輩は大変気持ちが悪い人だった。久しぶりに会った初っぱなの第一声、踏んで、その三文字をひとつひとつ脳内でリフレインして、噛み締めて、意味を理解した俺は全身の力を込めた肘打ちを相手の鳩尾に食らわした。痛みに呻き蹲るその背中を足の裏で目一杯、全力でげしげし、げしげしげしげしげしっ!
「踏んだ」
吐き捨てるように、呟いて、ゴミを見下すように辛辣な視線を向けて、俺は踵を返した。帰るわけではない、一応、今日は泊まっていく予定なので風呂を借りて色々と流そうと思ったのだ、水に、そう色々と、流そうと。

「……ああ、ちなみに風呂覗いたらシャンプー、丸飲みして貰いますね」
いやあ楽しみっすねえ、カメラ回してネットに回したりね、いやあ楽しみっすねえ、いやいや覗いてもいいんすよ、シャンプーたっぷり補充しとくんで!いやあ、楽しみだなあー、はははっ!

勿論、釘をぶっ刺しとくことも忘れない。


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蹴られた背中と打たれた腹が非常に痛い、時間が立った今現在もずきずきと俺を苦しめる。ぐずりと鼻を慣らしつつ、来客用の布団を床に敷いた。普段は一緒に狭い俺のベッドで寝るのだが、どう考えても機嫌を損ねたゴールドが一緒に寝てくれるとは思わない。

って、言うかさ。
冗談だったのに!久しぶりに会ったから気まずいかなあって思ってちょっとしたギャグのつもりだったのに!全くもってツンツンツンツン以下略デレゴールドの馬鹿!いやどう見ても俺が悪いけどね!顔を真っ赤にして俺の腹に肘を放つゴールドは食べちゃいたいくらいには、舌で舐めて歯で噛んで美味しく食べて飲み込んで愉悦感に浸りたいくらいにはとても可愛かったのだけれど!
まさかの展開、顔を覆って泣き出したい気持ちに俺はなりましたとさ、おしまい。

では無く、ここから奇跡のデレが起きたわけだ。
いやあ、まあさ、あのね?
つまり何が言いたいかと言うとさ。

マジで、俺の、ゴールドってかーわいいの!


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「せんぱい、舐めて」
柔らかいベッドに腰掛けて足を放り投げた、床に座り込んだ変態のレッド先輩は俺の右足を両手で受け止めて、俺を見上げた。疑問を訴えてくる視線を鼻で笑って、足で顎を掬うように持ち上げた。釣られるように浮かせた中腰が苦しいのか顔を歪める、湿った唇に指で触れて爪を立てた。
「もーいちど、言いますね」
泡まみれにして念入りに洗った自らの綺麗な足を指差して、にーっこり。
「舐めろ?」


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ゴールドがデレた、いやなんだこれ。
デレって言うか目覚めた、多分なにかにこいつ目覚めた。持ち上げられていた顎を自由にされて深く息を吸った、ついでに覚悟も決めた、いやいやなんの覚悟だよ。
ゴールドの白い足を両手で抱えて甲に唇を落とす、滑るように爪先まで下りて柔く噛んだ。整えられた爪に歯を立てて、指の隙間を舌で弄る。親指で足の裏を擽るように撫でれば、肩を強張らせて制止の声を小さく呟く。
「っ、う…ちょ、擽らないで下さ、い」
「えー」
「なんか背骨辺りがすっげー、ふにゃふにゃするから、無理」
じゃあ噛まれたり舐められたりするのは気持ちいいんだ?
ぞくぞくと首辺りが震えた、あ、やばい、超楽しい、かも。命令したのはゴールドだよな、じゃあ遠慮しなくていっか。
まあ今更、ゴールドの制止なんて意味を成さないけど。


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口を必死に押さえて身体を前のめりにして堪えて、耐える、色々、やばい、かも。
「…きもちいーんだ?」
俺の足を唾液で汚しながら緩んだ笑顔を向ける先輩を睨む、言葉をぶつけてやりたいが、口を開いたらもれなく喘ぎ声も添付しそうな気がする。荒い息を噛み締めた歯の間からゆっくりと吐き出した、背筋を汗が伝う。辛そうな俺を視線で犯すように、見上げる赤い瞳にも散々この人に弄られまくった身体は反応を示す。
今頃だけどすっげえ、自分の発言に後悔してる、数十分前の俺、ほんと馬鹿野郎!


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涙を浮かべた金色の目がきつく閉じられた、抑えきれない声を小さく洩らして、身体を固くして、快楽を否定しようとするゴールドを俺は内心で笑った。なにこいつ、ほんっと、食べていいの、まじ、食べたい。
足首を掴んでそのまま上に引っ張り体制を崩す、身体をベッドに背中から倒して、両足の間に身体を滑り込ませる。ゴールドの顔の横に手を付いて漸く形成逆転、見下ろす事が出来る。

いやあどうやら今日は一緒のベッドに寝れそうだ、良かった良かった。


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「食べちゃいたい」
ああもうご自由にしやがれってんだ、焦らされた身体はずきずきと疼いて苦しかったから、無言で先輩の首に腕を回した。
それをイエスだとちゃんと読み取った先輩の手が、服の間から汗ばんだ素肌を撫でる。堪えることを、耐えることを、抑えることを放棄した唇は震えて、高い声を響かせた。
それにまた笑った先輩から落ちるキスを予測した俺は目を瞑った、指先を食んだ時みたいに優しくされるのかな、と思ったけど噛み付くように奪い食い尽くすようなキスだったから俺も笑った。優しくされんのは今じゃなくていい、今はそれが欲しい。
とりあえず食べ過ぎ注意でお願いしたいっすね?


∴腐蝕美味。
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