良く笑うようになったわね、クリスに指摘されて口元に触れた。あれ、俺笑ってた?
「にやけるな、気色悪い」
「シルバーてめえ…」
「まあまあ、でも前まで塞ぎ込んだようにずーっとブスッてしてたんだもの」
「…あー、なるほど」

原因が無くなったからか。
「ほら、また笑った」
「気味が悪い」
無言で横に並んで歩いていたシルバーの足を踏む、しかし軽やかに避けられ仕返しと言わんばかりに脇腹に肘打ちが返された。思わず脇腹を抑えてその場に膝をついた、くそいってえ、もう少し手加減しろ馬鹿野郎。
「こ、このやろう…」
「お前が先に手を出しただろう、正式には足だが」
「ほら、ゴールド。通行の邪魔になるわよ、さっさと立って」
クリスが手を差し出す、それに掴まって立ち上がる、ずきりと脇腹が痛む、覚えてろよシルバー。せっかく先輩と離れたのに痛みとは別れられないらしい、はああ、重い溜め息を吐いた。

「あ、」
「あ?」
「あ?」
クリスが母音の一文字目を呟く、それに疑問符を添付させて俺達が拾う。指を差した方へ視線を向ければ、たくさんの風船がふわふわと一斉に空へ上昇、何かのイベントだろうか。色とりどりな球体が揺れる、思わず足を止めた。
「凄い量だな…」
「ちょっと気にならない?」
「超気になんだけど」
「行きましょうよ!」
クリスが俺達二人の手を取った、シルバーが一瞬驚いた顔をしたのでにやりと笑えば気持ちが悪いと睨まれた。気色悪い、気味が悪い、気持ちが悪いトリプルじゃねえか、溜め息をまた吐いた。

宙を見上げれば視界を埋めるカラフルな風船、不意に、視線がひとつの色を、捉えた。


あの色を忘れられな、い。

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