あーくっそだりいなあ。がりがりがりがり、歯につきんと冷たく沁みる物体で苛々した気持ちを少しでも解消出来ないかと思ってひたすらがりがりと噛み砕いていた、がりがり。額にぺとりと汗で張り付く前髪が邪魔臭くてしょうがない、がりがりがり。半分ほど食べ進んだ辺りで剥き出しになった棒の先端を前歯で噛んだ、そのままごろりと床に寝転がってぼんやりと木目の天井を見上げる。
「腹壊すぞー」
「あー」
自分では無い他者の声が酷く煩わしい、親切心から来るその忠告を適当に聞き流して目を瞑った。じわじわりと侵食するような暑さが腹正しい、夏なんて来なければいいんだ、いや来てもいいけどこんなに暑くなるな、温暖化ってなんだしくそくらえ。
吐き出した荒っぽい息と元々の茹だる気温のせいで溶け出したアイスが個体から液体に変化していく、ぽたり、滴が落ちて。どろり、棒をゆっくりと伝い顎や頬に垂れてきた。唇を開けて口内に入れる、そんな些細な行動さえめんどくさくて顔を汚すそれを放置した。
「あ、ほら、溶けてるよ」
「ん」
知ってる、でも以外にひんやりして気持ちよかったりするし、この味食べるの飽きた。ぽたり、垂れて落ちた液体が首元を滑り鎖骨の窪みに留まった、そういや白いミルクアイスだからまあちょっとあれだ、視覚的に見るとなんだか少しいかがわしいような気がするかもしれなくもない。
「……ゴールド」
「ん、なんすか」
唇を動かしたらくわえたままの棒が震えてぼたぼたと垂れた、うええ流石にそろそろ食うか、あーだるいだるい。
「色々となんか、あれだからさっさと食え」
「ムラムラしちゃいました?」
「ムラムラ言うな」
「今ならいいっすよ」
異常な気温にとうとう自棄になったみたいだ。今現在暑いってのにさらに体温上がる行為してなんなんだろうな、まあ別に意味なんて無いんだろうけど、あーちょうだりい。
「……ん、いや、暑いしいいや」
「あっそ、そりゃ残念」
もうほとんど原型を留めていないアイスを口に突っ込んで指で垂れたアイスを掬って舐めた、体温と同化したそれには先ほどまでの冷たさは無くて、ただべとべととした不快感だけが残る。ほんと暑いって困る、早く夏なんてくたばっちまえ。先輩もついでにくたばっちまえ。


∴やる気にならない。