実際のところ、胸は無いし可愛げもないし柔らかくもないし前髪爆発してる言われるし孕めないし、男前目指してるわけで女になる気もねーし?
まあ女の子が良かった、なーんて言われれば多分傷付くんだろうなあ、って思うけど、性別変えられないから仕方ないとこれも思う。
だからといって先輩が女だったら多分惚れて無かった気もする、あ、いやどうだろ惚れてたかも、全然ありかも。でも多分、先輩に抱かれないってのは変な感じもするかも。女役やってるとやっぱモノホンの女のが先輩いいんじゃねえの、とか結構考えたりするわけで。
まあ、要らん杞憂だったけどな。

「……なんすか、それ」
「可愛いでしょ、わさわざ化粧だってやったんだよ」
「う、かなり、似合ってますけど」
考え事して寝た、そして目覚めたらめちゃくちゃ美人な姉ちゃんに馬乗りされてた、一瞬で頭覚醒した、そして混乱した。
「ゴールドがギャルのが良いって、言ったからさ」
「はあ、ああ、ええ?」
だから女装、安易すぎやしねえか、男としてのあれこれ何処行った、戻ってこい今すぐこの変態に、常識とズボンも付属させてくれると尚有難い、スカートって破壊力、似合ってるだけに破壊力。
「触っても胸とかは無いけどね」
「合ったら多分今頃全力で泣きながらグリーン先輩にヘルプコールしてます」
紅を引いた唇を綺麗に歪ませて笑った、元から長い睫毛がきらきらと光って笑う度に小さく揺れる
、なんか付けてんかな、マスカラだっけ。
「まあ、女役はゴールドだけど」
「ちょ、」
上着の間から手を入れて擽るように脇腹を撫でた、思わず上体を起こそうとすれば、先輩が身体を押し付けて来たので柔らかいベッドに逆戻り。え、この人こんな格好しながら盛ってるわけ?
「ゴールドやわらか、その辺の女より良い」
「なわけないでしょうが」
それに今はどう見てもあんたのがおん、あっ、あっ、えっ、えっ、ちょっとちょっと待った待った、「待った!」「むぐ、っ」顎に手を当てて押し退けた。めっちゃ不服そうな顔をして、先輩は険を含んだ目で俺を見下ろした。
「なに」
「ちょっと…今日は、嫌って言うか」
「なんで」
「えー……っと、生理痛」
生理痛ってなんだ、痛、いらないな、生理だけで良かったな、いやいや違う違う、俺は列記とした男で合ってそのような乙女症状はどう頑張っても起きる筈が。
「……ゴールドは女になりたい、の?」
「心外すぎて」
この状況見て言えあんたの目は節穴か、いや知ってるけど、都合の良いことしか聞かないし見ないし、ああでもその辺はちょっと羨ましいかもだけど。そのスキルが俺にも欲しい。
「とうとうゴールドが女の子になったのかと思った……」
「なれねえよ」
「なればよかったのに」
「先輩は、俺に女になって、欲しいの」
「どうだろ」
「はあ」
「ゴールドは俺に女になって欲しい?」
「……どうだろうな」
「ほら」
先輩は見透かしたように笑って、唇を押し当てた。荒々しく性急に舌を絡ませて、さらに絡んだ唾液と共に微量の違和感、なんか変な味、する。
「んむ、っ…なんか、あじへん…」
「は、…ああ、口紅かな」
それ、要らなくね、邪魔。
指で先輩の唇をなぞった。湿った感覚、人差し指と中指に赤色が付着して、先輩のひらひら服で拭いてやろうかと思ったが変更、頬に触れた。
「なんかかいた?」
「俺の、ってかいた」
唇の端を持ち上げて、勝ち気に笑えば先輩が胸の先端を爪で引っ掻いた。
「い、った…ぁ」
「ごめんわざと」
ゴールドが可愛いことするからさあ。そのままべたべたと躊躇い無しに身体を弄り回す手に、まともな思考が飛びそうになる。熱を含んだ息を吐き出して、多分、最初で最後の先輩の女装姿を脳裏に焼き付けた。

まあ、うん、やっぱ似合ってないわ。

∴こんな荒々しい先輩が女なわけない!