この浮気者!
何処ぞの安っぽい捨て台詞を吐かれ、何故か一斉攻撃。詰られる責められる罵られる、え、あの、見覚えが全く無いんですけど!

そんな強くもないメンタルがぎしみしと音を立てる、胸辺りを抑えながら自虐的に俺は笑った、いや笑えないけど、なんかもう泣きそうだけどね!
「浮気者って、ちょっとあの、なんの話なの」
「やだ、レッドったら白々しい!」
ブルーが甲高い声で俺を避難、しかし声が楽しそうに弾んでいる、明らかおもしろ半分だろお前…!にやにやと目が笑っていて、思わず睨めば側に居たグリーンの後ろに隠れた。そのグリーンは目を細めて無言の重圧、おい、ちょ、やめろよいま真面目に泣けるから涙出そうだから!
「浮気?」
「そうよ!レッドったら先日可愛らしーい女の子と歩いていたらしいじゃないの。しかもでれっ、でれした顔で!酷いわ、ゴールドとは遊びだったのね!この浮気者!」
凄く分かりやすい説明を有り難う、しかし後半のそれ要らない、凄く要らない。けどそれには理由が有るので、もしかしたら弁解の余地と言うか、この状況からの挽回の余地が、あるかも。

「え、いやそれただ道案内してただけだし」
「しかも一回じゃ無いんですってえ?女の子に囲まれてにやにやしてたり、他にもプレゼント貰ったり、他にも全科あったり?」
「いやそんなにはいっぱい無いけど…」
「いっぱいじゃないけど、あるのね」
いやあの、もうブルーと話してると進まない、グリーンの視線は何かもう俺に確実な心のダメージを与えてくるし、ゴールドは顔を俯かせたまま、ずっと無言だし。

「ゴ、ゴールド」
後輩兼、恋人である彼の名前を呼べばゆっくりとこちらに歩いてくる、普段と違って、帽子の鍔を前にしているので影になって顔が見えない。そうして行動はほんとゆっくり、のろのろとした動きで俺の腕を掴んで、そのまま。


ぶん投げられた。

正式には背負い投げである、スローモーションで世界がぐるりと回る感覚、ブルーが堪えきれず爆笑したのを目に捉えて、地面と全身ハグ!嬉しくないハグするならゴールドでお願いしたい!
地面に崩れた体勢のまま、ゴールドをぽかんとした顔で見詰めれば定番の台詞。
「この浮気者!」

違うよ!背を向けて逃げるゴールドを追おうとしたら、グリーンが遮るように立ち塞がる。そうして指をぱきぱきと不穏にならして「痛め付けて下さい、と頼まれたからな」物騒な言葉を頂いた。…あの背負い投げってグリーン直伝だろ、ちょ、ちょっちょ、ちょっと話し合おうか、その、穏便にさ……、うんあの。


いだだだだだだだだだだだだ!!指はそっちの方向に回らないんだぜ!いったたたっ、あだだだ!!

∴浮気はいけません。

(こんなことしてる暇合ったら泣いて赤くなった目を帽子で隠した寂しがりな後輩のとこいきたい、んだけど!そこんとこどうですかグリーンさん!出る、出る、中身出る!いだだだ!)