なにも喋りたくない、その一言を最後に沈痛な面持ちで唇を閉ざしてしまったレッド先輩を見下ろしてとりあえず溜め息を吐いた、なにも喋りたくない、ねえ?いやはや今回はなにが先輩のマイナススイッチを動かしたんだろうな、しかもめんどくさくて厄介な拗ね方しやがって、ったく、あーめんどくせ。歯を真っ赤な唇に突き立てて強情な檻を作り上げた先輩の目は伏せられている、まつげなげーなんて感想は内心だけに留めておく、空気読める後輩とは俺のこと!はーあまったくまったく、
「先輩ちょうめんどくせー」
無反応、かと思いきやじわりと窪んだ目尻に透明な液体が浮かんだ、落下するのをふるふると堪える滴はまるで先輩の廃れたこころみたいでなんかちょっと笑えて、そんでちょっと切なくなった。膝を抱えて座るレッド先輩の横に俺も腰を下ろして壁と共同して先輩をサンドしてみた、間に挟まれた先輩はなにもしゃべらないしなにもかたらない。普段の巧みで流暢で小賢しい羅列達は喉で潰されているのだろう、悲鳴も嗚咽も、ただ必死に圧し殺して。

ばかだなあ。

ばかだなあ、
仕方ないから、優しくしてやるよ。

「先輩の声、俺意外に好きだったり、しちゃう感じなんすけど」
隣で項垂れた肩にごつ、ごつりと数回頭突きをした、口は閉じないがその代わり俺は目を閉じて頭を頼りない肩に預けた、ふるふると徐々に揺れ始めた硬い枕には気づかないふり、唇を動かして、いつも通り下らない話を俺はする、そうしてやがて湿ったような声色で、馬鹿にしたような言い方で、それで、いつも通り、何処か優しい相槌が来るのを、俺は待っている。
「ばかだ、なあ」

0907 聲(こえ)を聴かせて。
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -